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2023年バックナンバー

雑記帳

法廷録音を試みた弁護人が手錠かけられ法廷外へ 異例の制裁裁判に発展 大阪地方裁判所

 裁判所での録音録画は禁止になっています。
 各裁判官の訴訟指揮ですが、私が裁判官をしていた昭和55年から平成2年も同じでした。
 認める裁判官はいません。

 大阪地方裁判所において、令和5年5月30日、ICレコーダーで法廷録音をしようとした弁護人が、裁判官の退廷命令に応じず拘束される事態が起きたそうです。

 刑事事件の傍聴は、裁判公開の原則から誰でも可能ですから、傍聴が好きなヒマな人や(書記官から「関係者ですか」と聞かれることがありま)、傍聴記を書くライターもいます。

 令和5年5月30日午前11時30分から開廷の、ストーカー行為等の規制等に関する法律違反の罪に問われた女性被告人の公判だったそうです。
 ライターは「開廷前から多くの職員が控えていて物々しい雰囲気だなとは感じていた」と話しています。

 大阪弁護士会の中道一政弁護士は、令和4年12月28日、法廷内でのやり取りについて裁判所が作成した調書に不正確な点があるとして、大阪弁護士会の中道一政弁護士が大阪地方裁判所に異議を申立てたことがあるそうです。
 中道弁護士は4件の事件で法廷録音を求めていて、録音不許可の訴訟指揮について、通常抗告と特別抗告の両方を申し立てており、いずれも抗告理由に当たらないと判断されているそうです。

 令和5年5月30日の開廷直前に中道氏がICレコーダーを机の上に置くと、裁判官から録音の有無を問われ、中道弁護士は「答えない」「録音することで何の秩序が乱れるのか」などと応酬が続いたそうです。

 複数回の退廷命令を受けながらも、中道弁護士は、秩序を乱した理由を問い、岩﨑裁判官が「法廷警察権を執行します」と宣言すると、法廷外から職員と制服を着た人が数名現れ、「抵抗したら拘束しますよ」「拘束してください、手錠をかけてください」と述べた後、3人に抱えられるような姿になりながら、連行されたそうです。

 「法廷等の秩序維持に関する法律」に基づき、裁判官の命令や措置に従わず、暴言・暴行・喧騒などの不穏当な言動で裁判所の職務執行を妨害したり、裁判の威信を著しく害した者に制裁を科す裁判があります。

 裁判の公平を期するため、一般事件では、目撃者は担当裁判官になれないのですが(忌避と回避)、「法廷等の秩序維持に関する法律」では、目撃者である裁判官が、制裁として、「20日以下の監置もしくは3万円以下の過料または併科」をすることができます。

 私も、裁判官1年目にありました。
 3人の被告人が、一緒に審理されていたのですが、他の被告人1人の供述内容が自分に不利だったことから激高し、横にいた看守の手錠を手にして、供述をしていた他の被告人に投げつけました。

 被告人は、入退廷のとき以外は手錠をはずすのですが、裁判長の命令で、すぐに手錠をかけられました。
 「法廷等の秩序維持に関する法律」に基づき、科料を課しました。
 起案は、主任である私がやることになり、印象に残っています。
 3人の合議体ですが、私と右陪席は、自分の方に手錠が飛んでくるという危険を感じ、椅子を後ろに引きました。法壇はかなり高くなっていますから、後ろに下がれば、手錠は飛んできません(放物線を描くようにして投げれば、飛んできますが、それなら悠々さけられます)。
 裁判長は、プロでした。自分の危険も顧みず、自分を守ろうとせず、成り行きをすべて凝視していました。

 あまり、法廷の録音録画禁止について不満を言う弁護士さんはいないのですが、調書にいい加減なことを書かれたが、調書に異議を述べようにも証拠がないと言う弁護士さんはいます。
 確かに、書記官がとる録音は、裁判官が調書に印を押した時点で消される扱いですから、異議を述べようにないことも事実です。

 私は、法廷では、録音録画ができないことに何の不思議も感じませんし、自分の依頼者に不利になりかねないことをするつもりはありません。
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