2023年バックナンバー
雑記帳
銀行も生命保険会社も国債で含み損
アメリカの「scb」(シリコンバレー銀行)が破綻しました。
アメリカの金利が上がっています。
アメリカ新規発行国債の金利も上がります。
逆に、アメリカ新規発行国債の金利アメリカ国債の価値は下がります(後発の金利の高い国債の方が有利になります)。
アメリカ国債を償還期まで待てれば含み損ですみ、実損は出ませんが、換価をしてしまうと実損になってしまいます。
「scb」の場合、預金を引き出そうとする預金者が多く、現金が必要となったため、含み損があったアメリカ国債を売却せざるを得なくなり、含み損が実損になってしまって、取付け騒ぎになって破綻というストーリーです。
日本は大丈夫なのでしょうか。
銀行や生命保険会社が保有する国債など国内債の含み損益が急激に悪化しています。
銀行のうち、地方銀行が抱える含み損は令和4年12月末時点で計1兆4600億円です。令和4年9月末からの3か月で倍増しました。
生命保険会社では最大手の日本生命保険が初めて含み損となるなど、主要15社のうち10社が含み損です。
含み損とは何でしょう。
株式や債券などの有価証券には評価損益があります。
時価が取得時の原価を上回る場合に含み益、下回る場合には含み損です。
債券の場合は償還を迎えたり、売却したりしなければ実際の損益として確定することはありません。
全国99の地方銀行を対象に国債や地方債、社債など国内債の状況を調べたところ、含み損は令和4年12月末時点で計1兆4600億円でした。令和4年3月末には計2000億円、9月末には計6700億円と含み損が急激に膨らんでいます。
生命保険会社ではどうでしょうか。保険契約の多くは円建てが占めています。各社が集めた保険料や償還を迎えた有価証券を運用に回す先は国内の公社債や株式が中心です。
主要15社の合計で国内の公社債は約3600億円の含み損でした。令和4年9月末時点の約5兆5600億円の含み益から一転しています。
前記のとおり、債券は金利が上がると債券の価格は下落します。
日本銀行は、令和4年12月に長期金利が変動する許容幅をそれまでの0.25%から0.50%に広げました。
こうしたことを受けて長期金利が上昇し、地方銀行や生命保険会社が保有する国内債の価値は下がりました。
決算ではその時点の価格を反映するので、多くの地方銀行や生命保険会社が含み損を抱えることになりました。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクの国内債も令和4年12月末時点で1000億から2500億円規模の含み損でした。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクは、日本国債が上がって含み損を出したとしても、満期までもっていれば実損害には至りませんし、その体力はあるでしょう。
これに対し、地方銀行は地域経済の疲弊もあり、貸出先をなかなか増やせない状況が続いてきました。
国債等の有価証券の運用に依存度を高めた結果、金利が上昇する局面では含み損が膨らみやすくなっています。
地方銀行のうち横浜銀行など国際統一基準行(10行)では有価証券評価差額金の減少を通じて自己資本比率が低下し、貸出しの余力が落ちてしまいます。
その他の国内基準を採用している地方銀行では自己資本比率の低下に直結はしませんが、含み損の処理を先送りすれば、収益性が低い運用資金の固定化などでポートフォリオの健全性が損なわれるおそれが出てきます。
さらに地方銀行は、債券に投資した際の元本を利息収入や償還金で回収するのに要する平均期間が大手行に比べて長期化しています。
期間が長ければ長いほど金利が変動した際に債券価格の変化も大きく、一時的に大幅な損失を計上すれば個別行や金融システムに対する信認の低下につながる可能性もあります。
生命保険会社の場合は債券を満期まで持ちきることが多く、途中で売却しなければ損失は発生しません。
さらに時価評価の対象にならない「責任準備金対応債券」と呼ばれる会計上の区分があります。これは負債(保険契約)が30年や40年など長期にわたる生命保険会社の特性を踏まえ、保険会社に唯一認められたものです。
したがって会計上の影響が顕在化するわけではありません。
ただ、それでも含み益の減少や含み損の拡大は、保険金の支払い能力や財務の健全性を示す指標の低下につながります。
200%以上で健全とされるソルベンシーマージン比率では、含み損益が悪化すると計算式の分子にあたる有価証券評価差額金が目減りして比率も下がります。
アメリカの金利が上がっています。
アメリカ新規発行国債の金利も上がります。
逆に、アメリカ新規発行国債の金利アメリカ国債の価値は下がります(後発の金利の高い国債の方が有利になります)。
アメリカ国債を償還期まで待てれば含み損ですみ、実損は出ませんが、換価をしてしまうと実損になってしまいます。
「scb」の場合、預金を引き出そうとする預金者が多く、現金が必要となったため、含み損があったアメリカ国債を売却せざるを得なくなり、含み損が実損になってしまって、取付け騒ぎになって破綻というストーリーです。
日本は大丈夫なのでしょうか。
銀行や生命保険会社が保有する国債など国内債の含み損益が急激に悪化しています。
銀行のうち、地方銀行が抱える含み損は令和4年12月末時点で計1兆4600億円です。令和4年9月末からの3か月で倍増しました。
生命保険会社では最大手の日本生命保険が初めて含み損となるなど、主要15社のうち10社が含み損です。
含み損とは何でしょう。
株式や債券などの有価証券には評価損益があります。
時価が取得時の原価を上回る場合に含み益、下回る場合には含み損です。
債券の場合は償還を迎えたり、売却したりしなければ実際の損益として確定することはありません。
全国99の地方銀行を対象に国債や地方債、社債など国内債の状況を調べたところ、含み損は令和4年12月末時点で計1兆4600億円でした。令和4年3月末には計2000億円、9月末には計6700億円と含み損が急激に膨らんでいます。
生命保険会社ではどうでしょうか。保険契約の多くは円建てが占めています。各社が集めた保険料や償還を迎えた有価証券を運用に回す先は国内の公社債や株式が中心です。
主要15社の合計で国内の公社債は約3600億円の含み損でした。令和4年9月末時点の約5兆5600億円の含み益から一転しています。
前記のとおり、債券は金利が上がると債券の価格は下落します。
日本銀行は、令和4年12月に長期金利が変動する許容幅をそれまでの0.25%から0.50%に広げました。
こうしたことを受けて長期金利が上昇し、地方銀行や生命保険会社が保有する国内債の価値は下がりました。
決算ではその時点の価格を反映するので、多くの地方銀行や生命保険会社が含み損を抱えることになりました。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクの国内債も令和4年12月末時点で1000億から2500億円規模の含み損でした。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクは、日本国債が上がって含み損を出したとしても、満期までもっていれば実損害には至りませんし、その体力はあるでしょう。
これに対し、地方銀行は地域経済の疲弊もあり、貸出先をなかなか増やせない状況が続いてきました。
国債等の有価証券の運用に依存度を高めた結果、金利が上昇する局面では含み損が膨らみやすくなっています。
地方銀行のうち横浜銀行など国際統一基準行(10行)では有価証券評価差額金の減少を通じて自己資本比率が低下し、貸出しの余力が落ちてしまいます。
その他の国内基準を採用している地方銀行では自己資本比率の低下に直結はしませんが、含み損の処理を先送りすれば、収益性が低い運用資金の固定化などでポートフォリオの健全性が損なわれるおそれが出てきます。
さらに地方銀行は、債券に投資した際の元本を利息収入や償還金で回収するのに要する平均期間が大手行に比べて長期化しています。
期間が長ければ長いほど金利が変動した際に債券価格の変化も大きく、一時的に大幅な損失を計上すれば個別行や金融システムに対する信認の低下につながる可能性もあります。
生命保険会社の場合は債券を満期まで持ちきることが多く、途中で売却しなければ損失は発生しません。
さらに時価評価の対象にならない「責任準備金対応債券」と呼ばれる会計上の区分があります。これは負債(保険契約)が30年や40年など長期にわたる生命保険会社の特性を踏まえ、保険会社に唯一認められたものです。
したがって会計上の影響が顕在化するわけではありません。
ただ、それでも含み益の減少や含み損の拡大は、保険金の支払い能力や財務の健全性を示す指標の低下につながります。
200%以上で健全とされるソルベンシーマージン比率では、含み損益が悪化すると計算式の分子にあたる有価証券評価差額金が目減りして比率も下がります。