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2023年バックナンバー

雑記帳

公証官としての書記官



 裁判所の裁判官と一般職員との間には、分担があります。
 裁判官の基本的職務は「判断」です。「判決」「決定」「命令」「審判」など裁判書を作成することが基本的職務です。
 司法行政の最重要事項は裁判官会議で決められますから、司法行政という意味でも重責を担っています。

 これに対し、書記官の職務の基本は「公証」です。
 裁判の記録や調書などの書類の作成ができるのは書記官だけです。裁判官はできません。
 検察官が「判断」のほか、検察事務官に頼らなくても、自らが公証事務を取扱うことができるのと対照的です。

 なお、裁判官が書いて、署名(記名)・押印した「判決」「決定」「命令」「審判」など裁判の原本は、記録の中に綴られます。

 外部の人が見ることができ、裁判が執行される基礎となるのは、裁判書のコピーです。
 コピーにもいろいろ種類があります。
 「正本」は、強制執行などに用いられるためのコピーで、書記官が作成し、「原本」と同一の効力を有します。
 「謄本」は、文書全部のコピーで、書記官が作成します。
 「抄本」は、文書の一部のコピーで、書記官が作成します。

 もちろん、裁判官は書記官より上位であることは間違いありません。今年なりたての判事補(特別職)の方が、地方裁判所事務局長(一般職)より序列的に見れば上です。
 また、書記官の勤務評定は、裁判官(特例判事補含む)と当該書記官の上司である書記官がしますから、その意味でも、裁判官の方が地位が上であることはありません。

 外部の人が見ることができ、裁判が執行される基礎となるのは、裁判書のコピーにすぎません。裁判書の原本が裁判所外に出ることはありません(記録が、例えば和歌山地方裁判所から大阪高等裁判所に移動するときなどは別です)。

 書記官は、悪事をしようと思えば、判決や審判の「原本」を偽造をする必要はありません。
 極端な話、記録など不要です。事件が実在する必要もありません。

 判決や審判などの「正本」を偽造すればよいのです。裁判が執行される基礎となるのは、しょせんは「正本」という名のコピーですから。偽造コピーに書記官印を押せば一丁上がりです。
 弁護士が偽造すると、1発で除名でしょうし、書記官が偽造すると懲戒解雇です。
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