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2023年バックナンバー

雑記帳

大英博物館、中国ネットユーザーの抗議で「韓国旧暦のお正月」から「中国正月」

 大英博物館は旧正月に際し、「韓国の旧正月」という表現を使って中国のネットユーザーから批判を受け、その後、「中国の正月」に言い換えていたことがわかりました。

 大英博物館は、令和5年1月12日、ツイッターアカウントに「新羅アンサンブルの幻想的な公演とともに韓国の旧暦のお正月を一緒に楽しんでみてください」として、韓国の伝統公演を広報するための文とともに「Korean Lunar new Year」(韓国旧暦のお正月)を広報文句として表記しました。

 これに中国のネットユーザーが反発し、ツイートは「中国から来た伝統なのに盗むな」「旧正月はいつ韓国のものになったのか?」「博物館なら歴史をきちんと知るべきだ」などコメントで埋め尽くされ、大英博物館はツイートを削除しました。

 令和5年1月22日に、大英博物館は、SNSにウサギを持った中国、清の女性の絵を載せ、「Chinese New Year」(中国の正月)というハッシュタグを付けました。「2023年はウサギの年」として「絵は清の女性がウサギを優しく持っている姿」という説明も付け加えました。
 メディアに配布した文章でも「中国正月Chinese New Year」という表現を使いました。
 大英博物館報道官は「博物館行事とオンラインプラットフォームを通じて新年に良いことを祈りながら英国で、そして世界的に中国の旧正月を祝う」と明らかにしました。

 旧正月は、中国では「春節」、韓国では「ソルラル」、ベトナムでは「テト」、タイでは「ソンクラーン」、マレーシア「中国正月Tahun Baru Cina」などと呼びます。
 英語では「Chinese New Year」といいます。
 「Lunar new Year」というと、イスラム暦が、中国の太陰暦と全く異なる太陰暦ですから、イスラム圏からの文句が出そうです。

 太陰暦ですから、太陽暦基準でみると、毎年、正月はかわります。

 日本は旧正月を全く気にしませんね。ただ、カレンダーによっては、太陰暦を並記しているものもあります。
 日本は、明治5年に太陽暦(グレゴリオ暦)を採用するまで、日本独自の「天保暦」に依拠していたそうです。「天保歴」は、西洋の太陰暦を取入れ、従前の日本の暦より、精緻にしたものです。日本のカレンダーは、今でも日本独自の「天保暦」によっています。

 旧暦の日付は中国の「時憲暦」と日本の「天保暦」でほぼ一致しますが、異なる算出基準が用いられているため、たとえば西暦2033年から2034年に中国と日本で「旧正月」が大幅にずれるそうです。
 どうするかは、審議中ですが、まだ10年先のことで(カレンダー業者にとっては9年先ですね)、結論はでていません。旧暦などはどちらでもよい、中国の「春節」、韓国、ベトナムやマレーシアの旧暦に合わせようという意見もあります。

 中国の「春節」、韓国の「ソルラル」、ベトナムの「テト」、タイの「ソンクラーン」は、暦が完全に一致するそうです。
 もともと、明末清初に作られた中国暦である「時憲暦」によっていますから、一致するのが当たり前です。韓国、ベトナム、マレーシアには、日本と違い、暦をつくるだけの数学の基礎がありませんでした。

 中国は、1912年の中華民国建国と同時に太陽暦(グレゴリオ暦)を採用し、さらに清朝が滅亡すると中国全土でも同暦が正式な暦となりました。
 ただ、正月は、太陽暦ではなく、太陰暦の正月を春節として盛大に祝います。

 韓国は、李氏朝鮮時代は、清の属国でしたから中国暦である「時憲暦」をつかっていましたが、日清戦争の結果、韓国は清の属国でなくなり大韓帝国となりました。その前に、日本のすすめにより、中国に先がけて、太陽暦(グレゴリオ暦)を使用するようになり、日本統治時代は、日本と同じ太陽暦を使用し、第二次世界大戦後も太陽暦を使用しつづけています。
 ただ、韓国は、正月について、第二次世界大戦終了後は、太陽暦ではなく、太陰暦の正月をソルラルとして盛大に祝います。
 韓国の太陰暦は、明清の属国時代の「時憲暦」を使っていますから、中国の太陰暦と完全に一致します。

 韓国が、旧正月を定めるにあたり、中国の「時憲暦」をそのまま採用しているなら、それは「中国旧正月」ですし、韓国の独自基準で計算しているなら韓国の旧正月は「韓国旧正月」ということになります。
 韓国は、中国の旧正月を定めるにあたり、「時憲暦」を使っていますから、韓国の旧正月は「韓国旧正月」ではなく、「中国旧正月」ということになります。

 歴史に「if」はありませんが、日本が現在も太陰暦を使用したと仮定すれば、「時憲暦」ではなく、日本独自の「天保暦」を使用していますから、「中国旧正月」ではなく、「日本旧正月」と呼ぶのにふさわしいですが、韓国の旧正月は「韓国旧正月」ではなく、「中国旧正月」と呼ぶのにふさわしいということになります。

 大英博物館が、「韓国旧正月」と呼んだのは正しくなく、訂正後の「中国旧正月」が正しいということになります。

 日本人からしたら、どちらでもいいことですが、中国は中国なりの、韓国には韓国なりの主張があるようです。
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