本文へ移動

2021年2022年バックナンバー

雑記帳

旧朝鮮半島の労働者・自称徴用工の債権差押さえ

 旧朝鮮半島の労働者の申立により、水原地裁・安養支部は、平成30年に三菱重工業に旧朝鮮半島の労働者への賠償を命じた確定判決に基づき、令和3年8月8日、三菱重工業を債務者として、韓国の会社であるLSエムトロンを第三債務者として、代金債権8億5000万ウォン(約8000万円)について差押さえの決定をしました。

 日本と強制執行手続が同じと仮定すると(韓国は、日本と同一の国でしたから、例外を除いて法律は同じでした。韓国が「魔改造」していない限り同一と考えられます。以下、同じです)、不思議な話です。

 三菱重工業は、韓国の最高裁判所が判決を出す前に、韓国内の資産は、可能な限りすべて国外に逃避させているでしょうし、韓国での取引は一切打ち切っているはずです。
 商標権や特許などの資産は、国外に逃避させられませんから、残ったままです。三菱重工としても処分換金は難しかったか事実上不可能だったでしょう。

 三菱重工業が韓国の会社に対し、今ごろになって、換価の容易な売掛債権を残しているなどということは考えられません。

 何かの間違いかと思ったのですが、やはり間違いのようです。

 LSエムトロンが取引していたのは、三菱重工業の孫会社である三菱重工業エンジンシステム、取引をしていたのは農業機械のエンジンだそうです。
 ガスタービン、原子力エネルギーなどの大規模な発電・エンジン事業をする三菱重工業は、農業機械のエンジンは扱っていないそうです。

 韓国の民事執行法が日本と同じと仮定すると、LSエムトロンは、陳述書で、被差押債権は存在しないと記載して裁判所に提出し、債権差押さえを無視して、三菱重工業エンジンシステムに支払うことができます。
 差押さえ決定を取消す必要はありません。

 この手の話はよくある話で、執行裁判所に、本当に債権があるかどうかわかるわけはありませんし、執行裁判所が、調査する手段もありません。
 第三債務者が債務者に債権を有していない場合、執行不能となりますが、法律家は「空振り」と呼んでいます。よくあることで珍しいことではありません。
 債権者が、執行力のある判決正本等と、第三債務者の登記簿謄本を提出して、差押さえの申立をすれば、裁判所は、形式的な審査をして差押命令を第三債務者に送付します。

 LSエムトロンは、前記のとおり、陳述書で、被差押債権は存在しないと記載して裁判所に提出し、債権差押さえを無視して、三菱重工業エンジンシステムに支払うことも可能ですが、債権者がわからない(不確知)という理由で供託をすることも可能です。

 LSエムトロンが供託をしてしまえば、三菱重工業エンジンシステムとの将来の取引は期待できません。
 代金先払いなら取引は可能ですが、そんなに余裕があるかどうかは疑問です。

 LSエムトロンが供託をすれば、旧朝鮮半島の労働者・自称徴用工と、三菱重工業エンジンシステムが、供託金をめぐって訴訟をします。

 その場合、日本企業である三菱重工業エンジンシステムは、勝訴するまで、8億5000万ウォン(約8000万円)が入らないわけですから、実害が生じることになります。

 日本政府は、韓国に対する経済制裁をすべきでしょう。
 韓国の国際法無視の判決により損害を受けたわけですから。

 なお、強制執行による換価は、韓国の旧朝鮮半島出身者の望むところではないでしょう。三菱重工などから任意に支払ってもらえれば、日本による経済制裁は免れます。3年もの手続き放置はそのためかもしれません。

 三菱重工などは、任意に支払うはずはありません。

 日本政府の、強制的に換価すれば経済制裁で韓国を屈服させ、韓国に国際法を遵守させるという方針に反することになりますし、三菱重工業の取締役は株主代表訴訟(任意に支払わなければ、経済制裁により支払わずに済んだのに支払ってしまった。取締役は任務懈怠だから弁償せよ)の提起を受けるでしょう。
TOPへ戻る