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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

廃棄される再エネ 砂上の送電網、停電リスク軽視の「つけ」

 各地で電力需給の綱渡りが続く一方で、太陽光など再生可能エネルギーが使い切れずに捨てられています。

 東日本・西日本間を結ぶ送電網が細く、電力が余る地域から足りない地域へ融通できないためです。

 日本は静岡、新潟両県にある河川を境に東は50ヘルツ、西は60ヘルツで周波数が分かれています。
 周波数を転換できる量には限りがあり、電力融通のボトルネックになっています。
 西日本の太陽光パネルの電気などを、需要の多い東京に自由に送るといったことができませんない。

 昭和20年代以降、地域の10電力会社が原則管内の電力供給を担う独占供給体制が取られてきました。
 しかし、地域間を結ぶ送電線を太くして、相互に電力を融通し合うことを想定してきませんでした。

 見直しのきっかけはありました。
 東日本大震災で東京電力福島第1原発事故が起き、東電管内の供給力が大幅に低下しました。
 首都圏で計画停電が実施され、地域独占体制の弊害が明らかになりました。

 平成25年1月、送配電ネットワークに関する中立機関、電力系統利用協議会(ESCJ)が試算を示しました。
 東西の連系線の送電能力を90万キロワット増強する場合と、増強せずに停電するコストを比較しました。

 結果は停電コストの年平均12億円~16億円に対して、増強コストが平均63億円~118億円に上りました。
 「停電した方が安い」と金額で示した形です。

 現在は、停電リスクの克服が国の最重要課題だが、当時は増強に経済性がないと判断されました。

 震災時の計画停電を踏まえた電力システム改革を議論する経産省の審議会でも、平成24年3月、大手電力でつくる電気事業連合会は連系線の増強よりも各域内にバックアップ用のガス火力発電所を建設するほうが安価に済むケースもあると報告しています。
 東日本と西日本の連系線の大幅増強は先延ばしで決着しています。

 電力各社は当時、原子力発電の相次ぐ停止で化石燃料の輸入が急増し、経営を圧迫されていました。
 天候に左右される再生エネルギーは電力供給を不安定にした主因とされがちです。
 ただ、停電リスクを軽視し、送電網整備をおろそかにした「つけ」が回った面も大きいとも考えられています。


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