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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

東南アジアも「倍速利上げ」 通貨安歯止め狙う

 東南アジアの中央銀行が利上げを加速しています。
 インフレが止まらないほか、自国通貨安が進んでいるためで、フィリピンやインドネシアは通常の2倍以上の利上げ幅となる「倍速利上げ」に踏み切りました。
 今後も米連邦準備理事会(FRB)の利上げに追随する見通しですが、急ピッチの利上げの副作用で景気が減速する懸念も出ています。

 利上げの目的は第一に物価高騰の抑制です。
 ロシアのウクライナ侵攻後も欧米に比べ、物価上昇が緩やかだった東南アジアでしたが、新型コロナウイルス関連の規制がほぼ解除され経済活動が活発になった令和4年5月ごろからインフレが加速しました。

 フィリピンでは令和4年6月以降、政府のインフレ目標(2~4%)を上回る6%台のインフレが続き、直近の9月は6.9%と4年ぶりの高水準となっています。
 フィリピンの中央銀行は「2023年まで物価上昇率が上振れするリスクが残っている」と指摘した上で、「インフレを落ち着かせるために徹底した行動が必要だと認識している」として、今後も利上げをためらわない姿勢を示しています。
 物価上昇率が約14年ぶりの高水準を記録するタイも中央銀行が令和4年8月、9月と2会合連続で利上げを決めています。

 また、通貨安防衛の側面も色濃いといえます。
 インドネシア中銀は倍速利上げを決めた令和4年9月下旬、FRBの大幅利上げが「ドル高要因となり、インドネシアを含む新興国の通貨への(下落)圧力を強めている」と説明し、2年半ぶりの安値をつけるルピアの安定が重要だと強調しています。
先進国の金利の方が高ければ、多くの投資家はリスクの高い新興国からマネーを退避させる行動を取ります。
 米国の政策金利を上回るまで利上げを続けなければ、こうした構図は解消しないため、各中央銀行は今後も利上げ継続を検討せざるをえなません。

 世界市場でドル1強の様相が強まる中で、東南アジアの通貨も歴史的な安値圏にあります。
 フィリピンペソが対ドルで過去最安値水準にあるほか、マレーシアリンギは23年ぶり、タイバーツは16年ぶりの安値をつけています。
 FRBがゼロ金利を解除した3月の末と比較すると、ペソとバーツの下落率は12%に迫ります。
 円ほど大きくないものの、令和4年9月下旬に過去最安値を更新した英ポンド(13%)並みの下落率です。

 ただ、急速な利上げは個人消費や企業の投資活動を冷え込ませ、景気を減速させることにもつながります。
 アジア開発銀行(ADB)は9月下旬、東南アジアの令和5年の経済成長率を4月時点の5.2%から5%に下方修正しました。
 先進国に比べて高い成長率を維持する見通しですが、先進国や中国の景気が停滞すれば影響が波及し、一段と成長率が下振れするリスクがあります。

 各中央銀行は物価や景気、通貨の動向を総合的に踏まえた上で、金融政策のかじ取りをする必要に迫られます。
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