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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

口座凍結



 口座凍結という制度をご存じでしょうか

 「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」という法律に基づき、振込め詐欺やヤミ金融の被害の相談を受けた弁護士は、この法律に基づいて、送金先となった口座の金融機関に対し口座の凍結を依頼することができます。

 東京地裁・平成23年6月1日判決(判例タイムズ1375号)という判例があります。

 事案は、詐欺の被害事案であると判断した弁護士から口座凍結の要請を受けた金融機関が口座を凍結し、その後法律に基づいて預金保険機構に対し報告し当該口座の公告がされたところ、凍結された口座の名義人が金融機関に対して「犯罪利用口座ではないのに口座凍結、その後の公告がなされて風評被害を受けた」などとして3000万円の損害賠償や謝罪広告の掲載を求めたものです。

 裁判所は請求を棄却しました。

 同法律では「金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があることその他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めるときは、当該預金口座等に係る取引の停止等の措置を適切に講ずる」(3条1項)とされています。

 「捜査機関等」の中には弁護士も含まれるとしました。そのほか、金融庁や消費生活センターなどの公的機関、認定司法書士が含まれるとしています。

 そして、これらの者からの情報提供があった場合、金融機関は当該口座が犯罪利用口座ではないと知っていたなどの特段の事情のない限り、口座凍結等の措置を取ることができるとしています。

 当該事件では、当該金融機関は、凍結要請をした弁護士の実在性を確認した上で口座凍結、その後の公告などの手続に至っており、その行為に違法性はないとしました。

 被害者保護のための「立派」な法律だとは思うのですが、裁判所の手続も経ないで口座は凍結できるは、いかがなものかと疑問を持っています。ちなみに、議員立法です。

 私は、怖くて、1度も利用したことはありません。

 口座凍結による弊害も出ているようです。

 産経新聞によりますと、振込め詐欺などの犯罪に口座を悪用された人が、被害に遭っていない別の金融機関の口座まで凍結され、日常生活などに支障を来すケースが相次いでいるそうです。

 口座凍結されると、対象になるとほかの金融機関も含めて新たな口座をつくるのが困難になります。

 「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」は、犯罪に利用された口座を早期に凍結し、預貯金を事件の被害者に返還する目的で整備されたものですから、警察当局は、犯罪に使われた口座の名義人をリスト化して金融機関に通知し、金融機関が口座を凍結し、預金保険機構がホームページに口座情報を掲載します。

 ここまではいいのですが、リスト掲載者が新たに口座を開設しようとしても金融機関は拒否できる、という仕組みが怖いのです。

 もともと、口座を売る、あるいは、他人に渡すつもりで口座をつくるような人は、それだけで重い罪を犯しているわけですから、あまり声高に声をあげません。
 といいますか、それだけで即逮捕という重罪です。

 問題は、車上荒らしに遭い、キャッシュカードを盗まれたような例です。

 すぐに、金融機関に盗難届を出し、口座を止めれば、振込め詐欺に利用される危険はないのですが、ろくに残高がない場合、放置する人がいます。

 危険ですから、預金通帳、キャッシュカード、印鑑などが盗難にあったときは、金融機関に届け出てください。
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