本文へ移動

2021年2022年バックナンバー

雑記帳

海外でのパスポートの紛失

 私は、海外でパスポートを紛失し、再発行してもらったことがあります。
 1984年(昭和59年)3月19日のことです。
 私の保管しているパスポートの発行は、イタリア大使館となっています。

 私は、西ドイツに留学中で、首都ボンに住んでいました。
 その間に、イタリア旅行に行きました。
 電車でいける距離にあります。電車で行きました。

 ローマで5日ほど観光し、帰りに、ピサ(斜塔で有名なところです)パスポート入りの鞄の置引きにあいました。

 現在なら、イタリアからスイス、スイスからドイツと電車で行くのにパスポートは必要ありません。
 シェンゲン協定といって、シェンゲン協定内の移動にパスポートは不要です。
 当時は無理でした。
 国境の入国審査でひっかかります。

 ということは、現地にある日本の大使館や領事館でパスポート再申請の手続きをする必要があります。
 当然、留学中で、「一時帰国のパスポート」で帰国するわけにいきませんから、新しいパスポートを申請することになります。

 「政府の命により出張」と記載されている公用旅券ですから、有効期限は期限は帰国まで、印紙不要など、通常のパスポートと異なる点は一部ありますが、ほぼ一般のパスポートと同じです。

 再発行手続きは、まず、地元警察で、盗難証明書を発行してもらう必要があります。
 イタリアの田舎ですから、警察官は英語ができません。そのうち、昔船乗りをしていた初老の男性が、ピサ警察に遊びに来たということで、通訳してもらって、盗難証明書を取得しました。

 次は、ローマの日本大使館に電話連絡です。
 パスポート番号と発行日はメモしています。
 よくあることなのか、ローマの写真館で写真をとってもらい2枚持ってきてほしいとのこと、また、英語が通じる写真館を教えてもらいました。

 イタリアのホテルは、パスポートの提示なしに宿泊させてもらえません。盗難証明書があれば、宿泊できるとのことでした。

 ボンの大使館にも、盗難にあったと連絡しておきました。

 翌日、ローマの日本大使館に行って、再発行手続きを依頼しました。

 再発行申請手続書に「北ベトナム」「南ベトナム」という記載があったので「古い用紙を大切に使っているんですね」と言うと、「公用旅券を紛失する人は多くありませんからね」と言われました。

 手続きがおわって、いつ新しいパスポートがもらえますかと聞くと「最低1週間かかります。来週の〇曜日〇日に、電話して下さい」と言われました。

 5日間ローマに滞在していますから、1週間を利用して、フィレンツェとベネチアを旅行することにしました。現金の盗難はありません。個人用の小切手帳を持っていて、お金はあります。また、イタリアの鉄道パスは有効期間2週間のもので9日間残っていました。盗難証明書でホテルに泊まれます。

 指定された「1週間後の〇曜日」の前日にローマに戻り、夕方、電話しました。

 大使館職員は「どこに行っていたんですか」「公用旅券なので電信を利用するなど手続きを急いだところ、翌日再発行されました」「再発行の手続ができたとホテルに連絡すると、既にチェックアウト済みでした」「明日、とりに来て下さい」と言いました。

 翌日、大使館にパスポートを受取りにいきました。

 大使館職員が、なぜ、申請日に、ローマを離れて、フィレンツェとベネチアに旅行したのですかと聞きますから「5日間ローマに滞在して、ドイツに帰る途中にパスポートを置引きされたと最初に言っています。ローマに滞在するのは時間の無駄ですから」と答えました。

 なぜ、途中で、電話しなかったのかとの問いはありません。
 「来週の〇日〇曜日に、電話して下さい」と言ったことは、他ならぬ大使館員が覚えています。担当職員の名前も日時も何日に電話するようにとのメモもあります。

 公用旅券ですから、印紙は要りません。電信通信費だけを負担しました。
 マルクで慣れてる私にリラ建てで言われたので、数字の大きさに驚いたのですが、日本円で1200円くらいでした。

 大使館員は、私が帰るとき「裁判官は度胸があるのですね」「普通はパスポートを紛失すると、落込んでローマのホテルでふさぎ込む人が多いんですよ」と感心しながら言いました。

 パスポートを紛失して、再発行までの期間を利用して、イタリアを観光旅行する人は、その大使館員にとって、はじめてだったそうです。
 そんなものなのかと驚いたのは私の方です。
 
 私は「日本に住んでいるのではなく、ドイツに住んでいますから、そんなに違いはありませんよ」「どうせ電車で、航空券の買直しもないし」「前向きに考えるのが精神衛生のためにいいですよ」とで答え「おおきに」といって、ローマ・テルミニ駅に向かいました。

 もちろん、当時、携帯電話はありません。
 あれば、かかってきますよね。

 携帯電話といえば、私がイソ弁時代に、自費でDDIポケットのPHSを購入しました。3万数千円しました。
 勤務先にはPHSを購入したことも、電話番号も伝えませんでした。勤務先は、うすうす知っていたようですが・・
 もちろん、時間外に拘束されるいわれはありません。
 と言う話を他の弁護士にすると「度胸がある」といわれますが、当たり前のことかと思います。
 今のイソ弁さんは大変です。

TOPへ戻る