本文へ移動

2021年2022年バックナンバー

雑記帳

奨学金の出世払い

 岸田首相は、令和4年3月30日、政府の「教育未来創造会議」で、大学卒業後の所得に応じた「出世払い」型の奨学金の創設を提言しました。
 令和4年5月までにまとめる方針で、たとえば「大学卒業後、年収300万円以上になってから返済を始める」制度案などが検討されているそうです。

 労働者福祉中央協議会の「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」令和元年によりますと、39歳以下の奨学金制度利用者は約2人に1人で、利用していた奨学金の種類は「有利子」が41.2%で、無利子の3割を上回っています。

 奨学金の借入総額は平均324.3万円、借入総額が500万円を超えた人も12.4%に上り、返済期間は平均14.7年も続いています。
 支払いについては正規社員の4割が、非正規は6割弱が「苦しい」と回答しています。

 奨学金も第二種は最大3%の利息がつきますから、たとえ年収350万円、400万円でも返済は厳しいといえます。

 「日本学生支援機構奨学金」は経済困難の収入(所得)基準300万円以下の対象者に猶予を行っています。

出世払い

 出世払いという言葉があります。
出世しなければ払わなくていいという約束と思っていませんか。

 「出世払い」については、法律家は、出世しなければ払わなくていいという約束とは思いません。

 「出世払い」の約束を法律的にみると「条件」と解釈するか「期限」と解釈するのかが論点です。

 出世払いを「条件」と解釈する場合、「停止条件付債務」、つまり、将来出世したら支払うことを停止条件(成立すれば成就する条件)とする債務ですから、出世しなければ、出世するという停止条件が成就しないのですから、返済の義務はありません。

 しかし、出世払いを「期限」と解釈する立場があります。
 「期限」というのは、「条件」と違い、将来必ず訪れます。
 残酷なようですが、出世することが不可能になった時点で、返済期限が到来します。
 一括支払いとなります。
 現実に支払えるかどうかは別ですが・・・

 一般的に出世払い特約について、「出世するかしないかが分かったとき」を期限とする不確定期限と解した判例(大審院判決明治43年10月31日。大審院判決大正4年3月23日)があります。

 法律は原則として一般常識ですが、一般常識とは異なるものがあります。
 「出世払い」も、その1つですから、注意が必要となります。
TOPへ戻る