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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

塩野義製薬の経口抗ウイルス薬

 年明け以降に急増した新型コロナウイルスの感染者数はまだ落ち着く様子が見えません。

 そうした中、感染者には「飲み薬」の選択肢が広がってきています。
 厚生労働省は令和4年2月10日、アメリカのファイザーのコロナ向け飲み薬を特例承認しました。令和3年12月にはアメリカのメルクの飲み薬が承認されています。

 政府は、ファイザーとは令和4年中に200万人分、メルクとも令和4年中に160万人分の飲み薬を購入する契約を結んでいる。ただ、ファイザー製は先進国間での獲得競争が激しく、2月に日本に納入されたのは4万人分にとどまります。

 こうした海外勢に一歩遅れる形で、塩野義製薬の飲み薬も続いています。

 塩野義製薬社は現在最終段階の治験を進めていて、その結果がよければ、令和4年2月25日に承認申請をしました。
 承認されればファイザー、メルクに続く3剤目、国内メーカーとしては初のコロナ向け飲み薬となります。

 ファイザーとメルクは、特に重症化しやすい感染者だけを対象に薬を開発しているといます。
 飲み薬の効果も、そうした感染者の入院や死亡をどれだけ抑えられるかを指標にしています。
 ファイザーは89%、メルクでは30%、入院・死亡を抑制する効果があったとされています。

 他方、塩野義が行っている治験では、対象者がワクチンを接種しているかどうかや重症化リスクの高さは関係がありません。
 「日本のワクチン接種率は全人口の8割。ワクチン接種済みで、重症化因子がなく隔離されている多くの感染者から、症状をいかに速やかになくして安心につなげられるか」という観点で開発を行っているそうです。

 そのため、コロナ感染に伴う「症状の改善効果」を治験の目的にしています。

 具体的には、頭痛や発熱、喉の痛みなど12の症状をその度合いによってスコアリングし、服薬後の数値の改善度合いを測ります。
 多くの感染者で症状は自然に改善していくが、薬の服用でその改善スピードがどれだけ早まるかを重視しています。

 ファイザーも現在、ワクチン接種者や重症化リスクの低い感染者を対象に、症状の改善効果を評価する治験を追加で実施中です。
 最終的な結果は、令和4年後半に出る見込みです。

 ファイザーとメルクなど海外勢と塩野義の違いはもう1つあります。

 治験の内容とは関係ありませんが、ファイザー、メルクが治験を行っていたのはデルタ株の流行時期で、塩野義の治験は初期にはデルタ株、より大規模な治験はオミクロン株の流行時期に行われている点です。

 塩野義の飲み薬の注目点は、症状の改善度合いとオミクロン株に対する効果をどれだけ示せるかにあります。
 治験結果が出るのはもうすぐとのことで、新たな飲み薬の選択肢が広がれば、「アフターコロナ」にも一歩近づくことになると期待されています。


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