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2021年2022年バックナンバー

雑記帳

隠し録音

 令和元年6月5日に女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等の一部を改正する法律が公布され、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法が改正されました。

 この改正により、令和2年6月1日からは大企業、令和4年4月1日から中小企業にも、パワーハラスメント防止措置が事業主に義務づけられました。

 民事裁判ではパワハラを不法とする判決が相次いでいます。

 その証拠の多くは、被害者がひそかに録音した上司の罵声です。
 誰もがスマートフォンを持つ現在、誰でも簡単に隠し録音ができるようになりました。

 電話は、マイクロカセットの時代から簡単に隠し録音ができました。
 現在は、ICレコーダーに取って代わられています。

 マイクロカセットを依頼者に持って行ってもらって録音してもうのは難しかったですね。
 電話内容を録音してもらうのがせいぜいでした。

 その次は、ICレコーダーでした。
 初期のICレコーダーは、男性のスーツのポケットに入りきらない大きさでしたが、あまり売れなかったのか、スーツの胸ポケットに入るICレコーダーが売られ始めました。
 女性にICレコーダーを持って録音してもらうというのは難しかった記憶があります。

 現在は、スマートフォンを利用すれば簡単に録音できますから、隠し録音は簡単になりました。
 誰でも簡単に録音できます。
 スマートフォンの録音のアプリは音質も結構いいですね。
 気づかれないように録音するには、最初会う前から、録音スイッチをタップしておくのが賢明で、話を始めてからでは、相手に気づかれます。

 スマホなどデジタル機器の普及で、隠し録音へは容易になりました。
就業規則で「許可なく撮影・録音してはならない」と明文化している会社もあるようですが、裁判になると、会社側にまず勝ち目はありません。
 とりわけ、隠し録音の目的が不当解雇やパワハラの証明に限られる場合、従業員の懲戒は裁判で通りません。

 東京高等裁判所・昭和52年7月15日判決は「民事訴訟法は、いわゆる証拠能力に関しては何ら規定するところがなく、当事者が挙証の用に供する証拠は、一般的に証拠価値はともかく、その証拠能力はこれを肯定すべきものと解すべきことはいうまでもないところであるが、その証拠が、著しく反社会的な手段を用いて、人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集されたものであるときは、それ自体違法の評価を受け、その証拠能力を否定されてもやむを得ないものというべきである。そして話者の同意なくしてなされた録音テープは、通常話者の一般的人格権の侵害となり得ることは明らかであるから、その証拠能力の適否の判定に当っては、その録音の手段方法が著しく反社会的と認められるか否かを基準とすべきものと解するのが相当であり、これを本件についてみるに、右録音は、酒席におけるAらの発言供述を、単に同人ら不知の間に録取したものであるにとどまり、いまだ同人らの人格権を著しく反社会的な手段方法で侵害したものということはできないから、右録音テープは、証拠能力を有するものと認めるべきである」と判示しています。

 逆に、上司の立場からすれば、すべての話が、隠し録音されているつもりでしゃべればよいということですね。
 さほど難しいことではありません。


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