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2020年バックナンバー

雑記帳

中国の一人っ子政策の変更

 平成27年11月6日、中国が30年以上にわたって続けてきた一人っ子政策をついに廃止しました。
 
 共産党が党中央委員会第5回全体会議で決定したもので、これからはすべての夫婦が2人目の子供を持てるようになることになります。
 
  国営の新華社通信によれば、目的は「人口推移のバランスを取り、高齢化問題に取り組むため」だということです。
 
 実際のところ、一人っ子政策は今や例外と抜け穴だらけで、既に多くの夫婦には2人目の子供を持つことが認められています。
  例えば、少数民族や農村在住者、どちらかの親が一人っ子である場合などです。長子が障害児だったり、一部の省では長子が女児だった場合も2人目を持つことができます。
 さらに罰金が歯止めとなるはずのこの政策は富裕層には通用しませんでした。

 一人っ子政策を完全廃止しても、中国でベビーブームが起こる可能性は低いという予測です。問題は、中国政府の姿勢ではなく、社会の変化にあるからです。
 
 中国においても、都会的な生活を送り、教育レベルが高い市民は概して、大家族を作りたいと思いません。
 
 中国の合計特殊出生率は13年で1.67人とかなり低く、一人っ子政策を完全撤廃しても解消されることはないでしょう。
  多くの中国人女性は、出産すれば必死で手にしたキャリアを棒に振ることになると考えているからです。
 
 私自身、ドイツに留学した年(昭和57年。1982年)に複数のドイツ人から「Kinder sind teuer」(子どもは高くつく)という言葉が平気で使われるのを聞いて、びっくりした記憶があります。
 
 日本では、同じ事を思っていても、直截的な表現はしません。
 
 発展途上国は、子は労働力になりますから、子どもが多いほど生活は楽になります。先進国になればなるほど、子にお金がかかり、また、妻の働く機会が制限されて生活が苦しくなります。
 
 重要な点は、中国政府が引き続き家族計画に介入し続けるということで、一人っ子政策が「二人っ子政策」になっただけのことです。
 
 しかし、馬鹿正直に、一人っ子政策に従ってきた人がいます。
  テレビで放送されていましたが、一人っ子が事故で死に、そのときには、子どもが作れる年ではなくなっている夫婦の悲惨さは切実なものがあります。
 
 一人っ子政策は、中国の軍事力にも影響します。

  かつて、中国軍はヒューマン・ウエーブ・アタック(人海戦術)と呼ばれ、自分が死の危険にさらされても攻撃を強行する勇猛果敢な士気の高さで知られていました。
 
 解放軍兵士たちは、朝鮮戦争で近代的な武装の連合軍の機関銃陣地に身をさらして突撃を繰返し、攻撃を成功させました。
 自軍の兵士の死体を乗り越えて攻めてくる中国軍兵士(名目は義勇兵)に、アメリカは怖じ気づきました。
  日本の特攻についでの驚愕です。
  
 今の人民解放軍にそうした戦術を強いることはできなくなったと考えられています。
  
 解放軍の現役兵士たちの多くは一人っ子で、戦争によって息子が死ねば、その両親や祖父母は先祖の祭祀が絶えてしまうことになります。
 
 これは儒教的価値観の中国人が最も嫌がることです。
 今の中国軍兵士には、人海戦術などを用いることなどは絶対にできません。そして、士気が低いことになります。
 
 もともと、中国は戦争に弱い国ですから。
 
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