本文へ移動

2020年バックナンバー

雑記帳

メンデルの法則

 現在の理系の学生、大学院生が、論文を書こうとするとき、自分のたてた仮説に沿った研究データのみ論文に掲載し、仮説に沿わないデータは隠してしまうということがよくあるそうです。
 
 真理の探求という理系の本質からすると、むちゃくちゃな話です。
 
 グレゴール・メンデル(Gregor Mende)は、当時のオーストリア帝国にて司祭をしていました。
 
 オーストリアの偉人の1人です。
 私はオーストリアで購入したメンデルの切手をもっています。
 
 植物学の研究を行い、エンドウ豆を利用して、メンデルの法則と呼ばれる遺伝に関する法則を発見しました。
 
 メンデルの法則とは、以下のとおりです。
 
1 対になる形質のものを交配すると、雑種第1代では顕性形質が顕在して潜性形質が潜在するという「優劣の法則」
 
2 雑種第2代では顕性・潜性の形質をもつものの割合が3対1に分離して現れるという「分離の法則」
 
3 異なる形質が3つ以上あってもそれぞれ独立に遺伝するという「独立の法則」
 
 ただ、メンデルは「ずる」をしたという批判があります。
 
 遺伝子が、同一染色体にあると「独立の法則」は当てはまりません。
 
 例えば、色覚多様性の遺伝子は、性染色体(X)にあるので、色覚多様性の遺伝子を持つ男性(X'とY)と色覚多様性の遺伝子を持たない女性(XX)の間の子は、X'Y(色覚多様性の男性)、X'Y(色覚多様性の男性)、X'X(保因者の女性)XX'(保因者の女性)、つまり、男性は全員色覚多様性、女性は全員保因者となります。
 他にも、血友病などが有名です。
 
 メンデルは、7つの形質を選出し、上記法則があてはまると結論づけています。
 
 しかし、エンドウの染色体数は2n=14ですから、7つの形質以上の数の遺伝子を取り上げれば必ず独立の法則は破綻します。
 
 8つの形質を取り上げれば、同一染色体にのっている遺伝子による遺伝形質が、少なくとも1つでき、独立の法則は当てはまらなくなります。
 
 最大7つに限られるのに、うまいぐあいに7つを取り上げるということは不自然ですね。
 
 好意的に見れば、メンデルは自分の立てた法則に必ずしも従わない例があることを知っていたから、例外が多数あることを踏まえたうえで、それでもこの法則を取り上げる価値があるとの判断をもったということになりますが、悪く見れば、メンデルは自分の立てた法則に従わない例は発表せずに隠してしまい、都合のよいデータだけを発表したとみられても仕方ありません。
 
 普通は「悪く見る」というのが素直です。
 
 ただ、メンデルは、当時のオーストリア帝国にて司祭をしていたことから、司祭に仕える部下の聖職者が、部下のが司祭が、忖度し、メンデルに都合のいいデータのみを渡して都合の悪いデータは隠し、司祭であるメンデルは、自分の説に都合の悪いテータは知らないまま、発表したという説もあります。
 
 ただ、1865年に報告された報告は、1900年に再発見されるまで、日の目を見ることはありませんでした。
 
 なお、平成29年、日本遺伝学会は、長年使ってきた「優性」や「劣性」との用語を使わず言い換えることを決めました。遺伝子に優劣があるとの誤解を避けるためです。
 今後は優性を「顕性」、劣性を「潜性」とします。
 「優劣の法則」を「顕潜の法則」とするかどうかはわかりません。
 
 なお「色弱」も「色覚多様性」と呼びかえます。
TOPへ戻る