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2020年バックナンバー

雑記帳

茂木外相がモーリシャス首相と会談、環境・漁業・経済支援を表明

 令和2年7月25日、長鋪汽船の子会社が所有し、パナマ船籍(便宜置籍)のばら積み貨物船「わかしお」が、モーリシャス南東部沖付近でサンゴ礁に乗り上げ座礁しました。
 
 この座礁の際に船体を損傷し、2週間後の令和2年8月6日朝には燃料タンクに亀裂が入り、重油1000トン余りが流出しました。
 
 流出した重油はモーリシャスの生態系を破壊し、経済や食料安全保障、健康にも深刻な影響を及ぼすことが懸念されます。
 
 重油の流出による被害への補償が今後の大きな焦点となりそうです。
 
 海運事故は被害が多額に上るため、古くから船主の責任に上限を設ける「船主責任制限条約」があります。
 
 条約により、船主である長鋪汽船(岡山県笠岡市)が負う賠償額は上限が20億円もしくは70億円にとどまる可能性が高いそうです。
 
 油の回収にかかった費用、漁業や観光業への損害などが対象となり、賠償額は船の総トン数によって異なりますが、今回座礁した「わかしお」の場合、モーリシャスが批准する「1976年条約」をもとに試算すると約20億円で、日本が批准している「96年議定書」は、貨物船の大型化で責任限度額が引き上げられたことから約70億円となります。
 
 裁判がモーリシャスで提起されれば20億円にとどまります。
 
 もとより、賠償の責任を負うのは船主である長鋪汽船で、商船三井はチャーターしている立場にとどまるため、賠償責任を負いません。
 
 貸切りバスが交通事故を起こしても、貸切った乗客が、賠償責任を負うことはありません。
 
 令和2年9月7日、茂木敏充外相はモーリシャスのジャグナット首相と電話会談を行い、貨物船「わかしお」の座礁事故を受け、日本政府として漁業・環境・経済支援策の概要を説明しました。
 
 茂木外相によると日本側から、
①事故再発防止のための海上航行安全システム、初動体制の強化等への支援
②汚染環境改善のためのマングローブ林保全・再生のための専門家の派遣、サンゴ礁等の環境モニタリング、生態系再生等への協力、零細業業者の生計立て直しのための業業関連資機材の提供、沿岸漁業の振興協力
③モーリシャス経済の回復、発展の後押しなど財政面を含む協力、貿易投資セミナーや官民合同ミッションの派遣
 などを提案・説明しました。
 
 モーリシャスのジャグナット首相からは、今回の事故を決して日本の責任とは考えていないが、国際緊急援助隊の迅速な派遣や資機材供与などについて、大変ありがたいと謝意が表明されたということです。
 
 モーリシャスも不幸中の幸いでしたね。
 
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