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2020年バックナンバー

雑記帳

年金の繰上げ受給

 令和2年5月29日「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、令和2年6月5日に公布されました。
 
 パートの厚生年金の拡大など重要な改正はあるのですが、繰上げ受給の減額率縮小と、繰下げ受給の上限が70歳から75歳に変更されるという改正がありました。
 
 繰下げ受給が70歳から75歳への変更は、あまり意味がありません。
 
 現在、65歳の受給を70歳からの受給に繰下げて受給している人の割合は1%程度です。繰下げ受給の上限が70歳から75歳になったからといって、あまり影響はないでしょう。
 
 繰上げ受給の減額率縮小は影響があります。
 
 令和4年4月1日から繰上げ減額率は月0.5%から0.4%に縮小されることになります。
 
 繰上げ受給は、60歳から65歳まで、1か月きざみで選べるのですが、これまでは1カ月早めるごとに「0.5%」ずつ減額されてきたのですが、その減額幅が「0.4%」へと、少し有利になります。
 
 例えば、現在、60歳から受給を開始すると、5年間60か月分減額しますから、受給額は30%減少します。
 1-0.5%×60=1-0.3
 これが一生続きます。
 
 一生涯に受取る年金額を考えます。
 
 損益分岐点は、受給金額にかかわらず76歳8カ月で、76歳8カ月前に死亡すると60歳からの繰上げ受給が得になり、76歳8カ月後に死亡すると60歳からの繰り上げ受給が損になります。
 
 令和2年4月1日の改正によって、少し変わります。
 
 例えば、60歳から受給を開始すると、5年間60か月分減額しますから、受給額は24%減少します。
 
 1-0.4%×60=1-0.24
 これが一生続きます。
 
 一生涯に受取る年金額を考えます。
 
 損益分岐点は、受給金額にかかわらず80歳10カ月で、80歳10カ月前に死亡すると60歳からの繰上げ受給が得になり、80歳10カ月後に死亡すると60歳からの繰り上げ受給が損になります。
 
 男性の平均寿命が81.2歳ですから、60歳からでも65歳からでもあまり合計額は変わらず、男性なら、60歳から受給を開始するのが「お得」となりそうです。
 
 ただ、60歳から繰上げ受給を選択するかどうかを判断するのは60歳の時です(手続きに要する期間を考えると、少し前になります)。
 
 平成30年の平均余命は、男性は23.84年ですから、60歳まで生きた男性は83.84歳まで生きることが期待され、女性は23.84年ですから、60歳まで生きた女性は89.04歳まで生きることが期待されます。
 
 と考えると、65歳の受給の方が得かなという感じがします。
 
 ただ「健康寿命」という要素があります。
 
 程度にもよりますが、介護を受けなければならなくなってから年金をもらっても、自分で自由に使えなくなります。
 
 自分の年金ですから、自由に使えるうちにと考えるのが普通です。
 また、「健康寿命」が尽きたあとのことは知ったことではありません。
 
 男性なら、60歳時点で83.84歳まで生きることが期待されますが、健康寿命は、もっと早いですから、損益分岐点が80歳10カ月であることを考えて、60歳からの繰上げ受給を開始するのが「お得」となりそうです。
 
 ただ、健康な男性なら、65歳まで働けるのが普通であり、70歳くらいまでは働けるでしょうから、働いているうちは受給せずに、65歳になって受給するのがいいのではないでしょうか。
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