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2020年バックナンバー

雑記帳

九州の面積を上回る「所有者不明土地」

 土地は、通常価値のあるものです。
 
 ただ、長期にわたり登記されず所有者が不明になっている土地があります。
 
 「所有者不明土地問題研究会」(座長・増田寛也元総務相)の推計では、このように長期間未登記の土地の総面積は九州の面積(約368万ヘクタール)を上回る約410万ヘクタールにも上っているそうです。
 
 都市部の土地のように利用価値が高いならば権利関係をはっきりさせるメリットはあります。
 
 しかし、原野や山林など利用価値のない土地は、特に登記するメリットがないために相続発生時に放置されることがあります。
 
 所有者不明土地が生まれるのは「所有者が誰なのかをはっきりさせるためにする登記」(権利登記)が義務ではなく、各相続人の意思にゆだねられているからです。
 
 そして、相続は親から子へ、子から孫へと代々行われます。代を経るごとに関係者も増えることが一般的なので、誰が相続人なのかよく分からなくなってしまうことになります。
 
 ちなみに、弁護士が、3代や4代前の先祖の名前になっている土地について、登記を依頼されることがあります。
 
 通常は、現実に土地を利用している人や近親者くらいしか存在を知らず、他の法定相続人は知りません。
 
 ただ、売却しようとかいう話になると、自分の名義にする必要があります。
 通常は、時効を主張する場合が多いです。
 
 3代や4代前の先祖の名前になっている場合、相続人が200人~300人ということも珍しくありません。
 
 といいますか、私は、裁判官当時も、弁護士になってからも、事件を手がけています。
 
 任意に登記をしてくれるか照会し、応じない人に訴訟を提起することになります。
 「なぜ私が被告にならなければならないのか」という苦情もきます。
 刑事の「被告人」と民事の「被告」を混同しているのでしょうね。
 
 民事の「被告」は、単に訴えを提起された当事者という意味しかありません。
 
 政府も黙っていられません。
 
 土地強制収容の時に、誰が所有者かわからなければ手続きが進みません。
 
 日本の登記制度は、世界に冠たるもので、登記魅了の土地の相続人を探すことは可能なのですが、最後に登記した人の戸籍からたどるなどしなければならず膨大な手間がかかります。
 
 公共事業の用地取得などでは、この相続人探索の手間が大きな負担となっています。
 
  国土交通省によると、道路を新設するために、一部予定地の地権者を調べたところ、最後に登記されたのが明治37年、その後、調査したところ法定相続人は148人にも上り、土地収用手続きのために約3年もかかった例もあるとそうです。
 
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