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2018年バックナンバー

雑記帳

山尾志桜里議員のW不倫の損害賠償請求訴訟

 立憲民主党の山尾議員と政策顧問の倉持麟太郎弁護士の不倫疑惑で、損害賠償請求訴訟が1件提起され、1件提起されそうです。

 

 まず、倉持弁護士の元の奥さんから、山尾議員に対する損害賠償請求訴訟が提起される見込みです。

 

 倉持弁護士の元の奥さんは、山尾議員と倉持弁護士が不倫をしていたと仮定した場合、双方に対し、慰謝料請求権を有していることになります。

 

 不真性連帯債務にあたります。

 

 真正連帯債務と不真正連帯債務をご覧下さい。
 

 真正連帯債務と不真正連帯債務の違いをご存じでしょうか。

 

 真正連帯債務と不真正連帯債務をあわせて「連帯債務」と呼ぶこともありますし、真正連帯債務のことを、「真正」を略して「連帯債務」ということもありますので、少しややこしいですが。

 

  連帯債務の典型的な例は、連帯保証でしょう。

 

  連帯債務は債務者間に一定の人的関係があることを前提としています。

 

  効果は、債権者は、連帯債務者の一人に対し、または、全員に対し、全額の弁済を請求することができるというものです。

 

 民法434条から439条までに定められている「請求」「更改」「相殺」「免除」「混同」「時効完成」は、連帯債務者の一人に対し生じれば、他の連帯債務者に対しても、その効力を生じます。

 

  もっとも「免除」と「時効完成」については、「連帯債務者の負担部分に限り」効力を生ずるとされています。

 

 不真正連帯債務と解されているもので、良くある例は、以下の3つです。

 

 1 会社の役員の職務上の不法行為と会社の責任
    役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負いますが(会社法429条)、役員個人が、不法行為者として、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合、役員等個人と会社の債務は、不真正連帯債務の関係に立つと解されています。

 

 2 使用者責任
    被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を原則として負いますが(民法715条)、被用者個人が、不法行為者として、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合、被用者個人と雇用者の債務は、不真正連帯債務の関係に立つと解されています。

 

 3 共同不法行為
   共同不法行為(民法719条)において、各共同不法行為者の負う損害賠償債務は、不真正連帯債務であると解されています。

 

 大昔には「明文のあるものの他」「不真正連帯債務の関係に立つ賠償債務については負担割合はない」と言われてきました。

 

 1についての公刊された判例は見あたりませんが、2、3の諸判例からすれば、自己の負担分以上に、第三者に賠償責任を果たした会社や他の役人から求償されないと考えるべきでしょう。

  ただ、各人に何百億なんかの支払いを命じたところで、とれるはずもありません。

 

 2については、基本的に、会社の負担分0、被用者の負担分100のはずです。
  しかし、被用者に職務遂行上の過失があっても、「重過失」が認められないときは、雇用者の損害賠償請求は棄却されていますし、重過失が認められるような場合でも、被用者側の過酷な状況や会社の非などが考慮されて、その責任が25%ないし50%に軽減される判例もみられます。

 

 3については、2台以上の自動車の事故により、巻き添えを食った被害者の賠償責任について、各運転手の過失割合に応じて負担割合が決められるのは、法律家なら「自明」であり、一々検討する人もないでしょう。不貞の夫と、相手方女性への慰謝料請求は共同不法行為ですが、不貞の夫と、相手方女性に、それぞれの負担割合(夫が高く、相手方女性が安い)があるのも「自明」ですね。

 

  不真正連帯債務という法律関係が生じる場合は、要は、被害者が、全額賠償を受けられればそれでいいのです。そして、被害者も、2重、3重には請求できません。

  あとは、不真正連帯債務を負担する側で、負担分に応じて清算されれば紛争は解決です。

 

  ちなみに、妻が不貞行為をはたらいた女性を訴え、夫に対しては離婚調停の際に慰謝料請求権を放棄した場合はどうでしょう。

 共同不法行為であることに間違いはありません。

 「不真正連帯債務であって連帯債務ではないから,その損害賠償債務については連帯債務に関する同法437条の規定は適用されないものと解するのが相当である。」(最高裁判所・最判平成6年11月24日判決 判時1514号82頁)とされ、一方当事者に対する「免除」の効力は他方におよびませんから、不貞行為をはたらいた女性は免除の主張ができません。

 

 

 

 倉持弁護士の元の奥さんと、倉持弁護士との間では、示談ができ、文書も作成されているでしょう。

 

 そして、倉持弁護士の元の奥さんは倉持弁護士から、一定の財産を受領して、それ以上の金銭請求をしないという内容の示談をしているかと思われます。

 

 ですから、倉持弁護士の元の奥さんは倉持弁護士に対し、訴訟提起などはできません。

 

 ただ、山尾議員に対する損害賠償請求訴訟は提起できます。

 

 倉持弁護士の元の奥さんは倉持弁護士に対する慰謝料請求権を免除するとの示談が成立しているでしょうが、「不真正連帯債務であって連帯債務ではないから,その損害賠償債務については連帯債務に関する同法437条(註。免除)の規定は適用されないものと解するのが相当である。」(前記・最高裁判所判例)との判例どおり、倉持弁護士の元の奥さんは、山尾議員に対する損害賠償請求訴訟を提起できます。

 

 週刊誌の記事等を書証として出すだけで不倫の立証は十分、あと、いかに、自分が傷つけられたかを本人尋問で述べるだけかと思います。

 

 倉持弁護士の元の奥さんに政治的な意図がなく、ただ、山尾議員に金銭支払いを求めるということでしたら、訴訟を提起するなどして、和解金を勝取るということは可能です。

 

 訴訟をしても判決で500万円は難しいでしょうが、山尾議員が、裁判上の和解をして金銭を支払う、示談内容は口外しないという内容なら、1000万円くらいはもらえるかと思います。

 

 和解調書を閲覧されてはまずいので、金額などは書かず、和解の席上で、和解内容は口外しないと合意し、代理人弁護士が現金を受取ったうえで、原告のその余の請求権放棄と、一切の債権債務なしという和解が成立するかと思います。

 

 倉持弁護士の元の奥さんに政治的な意図があり、山尾議員からの金銭支払いは関係ないということでしたら、訴訟を提起して徹底的に争い、山尾議員を法廷に引っ張り出すことが可能です。

 

 本人尋問には偽証罪の適用はありませんが、「肉体関係はない」と法廷で言わせておいて、判決で「肉体関係あり」と認定されれば、山尾議員の政治生命に黄色信号がともります。

 そちらの方が楽しみですね。

 

 なお、山尾議員の夫である山尾恭生氏の債権者が東京地裁で起こした債権者代位訴訟を提起し、平成30年4月20日に第1回口頭弁論がおこなわれるそうですが、債権者代位権に基づいて、山尾議員と倉持弁護士に対し、連帯して700万円を求める訴訟だそうです。

 

 訴訟代位権は、民法423条に定まっていますが、慰謝料請求権は、債務者の一身に専属する権利でしょうから、認められないかと思います。

 

 

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