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2019年バックナンバー

雑記帳

奨学金と分別の利益

 日本学生支援機構が奨学金を貸与するにあたり、両親のうちどちらか収入の多い方を「連帯保証人」に、4親等以内の親族を「保証人」にとります。
 
 「連帯保証人」と「保証人」はどうちがうのでしょう。
 
 「保証人」には「催告の抗弁権」と「催告の抗弁権」があります。
 
 民法452条には「債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない」と定められ、民法452条には債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない」と定められています。
 
 「保証人」には、本人に先に請求してほしい、また、本人に財産があるなら、先に強制執行してくれという権利があるのですが、民法452条には、「連帯保証人」は、この権利はありません。「連帯保証人」は、本人より先に請求されても、強制執行されても文句は言えません。
 
 その他、「保証人」には「分別の利益」があります。
 
 民法456条には「数人の保証人がある場合にはそれらの保証人が各個別の行為により債務を負担したときであっても、427条の規定を適用する」と定められ、民法「427条には「数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う」と定められています。
 
 つまり、「保証人」の場合、連帯保証人を入れて、保証人の合計が2人なら2分の1、保証人の合計が3人なら3分の1を支払えばよいことになっています。
 
 連帯保証人には分別の利益はありません(別々に連帯保証した場合。大審院・大正6年4月28日判決)。
 
 「保証人」に全額返済を求めることは可能です。2分の1をこえる部分の返済を受領したからといって、非債弁済になりません。不当利得として返す必要はありません。
 
 奨学金が返せなくなったとします。
 
 本人も返せない、連帯保証人も返せないということになりますと、日本学生支援機構に返済を求めます。
 本人、連帯保証人、保証人の3名から借用書を徴していますから、「保証人」は分別の利益があり、半額の支払い義務しかありません。
 
 日本学生支援機構は、「保証人」に対し「分別の利益」によって支払い義務が半分になるということを説明しないまま保証人に全額請求し、応じなければ法的措置をとると伝えていました。
 
 街金やサラ金ならともかく、公的機関のとる態度ではありません。
 
 日本学生支援機構によると、減額される可能性があるのは、全額請求を受けた保証人のうち機構と協議して返還中の人と、督促に応じて返還中の人を合わせた延べ1353人だそうです。
 
 このうち分別の利益を主張して減額を認められたのは延べ75人で、残る9割超の延べ1278人は機構から知らされないまま全額分の返還を続けているそうです。
 
 日本学生支援機構は新年度から保証人になる人に伝えるということにしました。
 
 しかし、「保証人」が、返還中に分別の利益を主張すれば、機構は減額に応じるとしていますが、分別の利益を告げるつもりはありません。
 
 返還中の保証人に直接伝えない理由について、遠藤勝裕理事長は「伝えれば事実上、半額を回収できなくなり、その分は税金で補塡せざるを得なくなるため」と話しているそうです。
 
 「税金で補填」は最初からわかっている話で、理由にはなっていません。
 
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