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2019年バックナンバー

雑記帳

むすめふさほせ

 「むすめふさほせ」という言葉を知っていますか。
 
  百人一首で、1枚札(最初の1文字だけで下の句が判る)の7枚のことです。
 
 む 村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧たちのぼる 秋の夕暮れ
 
 す 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢のかよひ路 人目よくらむ
 
 め めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな
 
 ふ 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ
 
 さ さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば いづこもおなじ 秋の夕暮れ
 
 ほ ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる
 
 せ 瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
 
 読み手が、上の句を1文字読んだだけで、下の句がわかり、そのカルタをとることができます。
 
 判決も、「むすめふさほせ」と同じく、裁判官が、主文の1文字を読んだだけで、原告勝訴、被告勝訴がわかるというのをご存じでしょうか。
 
 民事第一審なら「げ」と「ひ」です。
 
 「げ」なら「原告の請求を棄却する」ということで原告敗訴です。
  「ひ」なら、「被告は原告に対し、金○○円およびこれに対する平成○年○月○日まで年五分の割合による金員を支払え(註。例です。)」ということで原告敗訴です。
 
  ただ、確認訴訟など、一部の例外はないわけではありません。
 
 民事第二審なら「こ」と「げ」です。
  「こ」なら「控訴人の控訴を棄却する」ということで控訴人敗訴です。
  「げ」なら「原判決を取消す」「原判決を次の通り変更する」ということで被控訴人敗訴です。
 
  あまり、例外の経験はありません。
 
 あまり意味はないかも知れませんが、傍聴席の記者が、真っ先に法廷を飛び出し、速報を流すことができます。
 
 弁護士が判決を聞いていれば、最初の1文字で、勝訴か敗訴かわかります。
 
  もちろん、全面勝訴、全面敗訴の場合で、交通事故によくあるように、「いくらか払うのはわかっている」「金額が問題だ」という事案では、実質勝訴か敗訴かは、金額を聞くまでわかりません。
 
 もっとも、世間の耳目を集めるような事件はともかく、弁護士が、法廷に行くことは通常ありません。
 
  あとで電話で聞くか、依頼者からの希望があったときは、事務員に印鑑を持たせずに行かせます。
 
  上訴の期間は、判決言渡時ではなく、代理人が判決正本受領した日からスタートしますから、余り早く判決正本を受領しない方がいいですね。事務員に印鑑を持たせないという理由もそこにあります。
 
 なお、最高裁の場合、民事事件で口頭弁論を開くという段階で、原判決の破棄など見直しということが、一応推認できます。
 
  上告人敗訴なら、口頭弁論は開かれません。
 
  もっとも、控訴審で、請求棄却の敗訴した原告・控訴人が上告したところ、「原判決を破棄して、第一審判決を取消す。上告人の訴えを却下する」と、「請求棄却」が「訴え却下」にかわっただけで、いずれにせよ原告・控訴人が敗訴する場合があります。
 
 喜んで、口頭弁論期日に最高裁に行くと、「ばか」をみることがあります。
 
 私の知人の弁護士さんに「最高裁にだまされた」と怒っていた方がおられました。
 
 別に、だまされたわけではないんですがね。
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