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2019年バックナンバー

雑記帳

弁護士刺殺、秋田県にも賠償命令・県警が犯人誤認

 平成22年11月4日早朝、55歳の秋田弁護士会会員が刺殺されました。
 
 秋田弁護士会会長を歴任された方です。
 
 日本弁護士連合会では、消費者問題対策委員会の委員長をされていました。
 
 動機なのですが、菅原受刑者(75)は、秋田弁護士会会員が、菅原受刑者の妻の代理人になり、離婚調停の関係で恨んでいたという動機でした。
 
 判決によると、事件当時、現場には秋田県警の警察官2人が駆けつけたのですが、警察官2人は、秋田弁護士会会員を犯人と取違えて、菅原受刑者から拳銃を奪い取った秋田弁護士会会員さんの手首をつかみ、その間に菅原受刑者が、持込んだ刃物で秋田県弁護士会員の胸を刺し殺害したという事案です。
 
 事件を受け、遺族側は、平成25年10月、菅原受刑者に加えて秋田県を相手取り、計約2億2300万円の損害賠償などを求める訴訟を秋田地方裁判所に起こしました。
 不法行為の時効は3年ですから、時効前に提訴をしたという事になります。
 
 1審の秋田地方裁判所は「警察官が拳銃を手にしている者を侵入者と認識しても不合理ではなく非難できない」などと結論付け、県警側の責任は認めず請求を棄却し、菅原受刑者に対して遺族側に約1億6480万円を支払うよう命じました。
 
 控訴審の仙台高等裁判所秋田支部は、平成31年2月13日「警察官が男を侵入者と識別し、秋田県弁護士会会員に加勢していれば、菅原容疑者を制圧して逮捕できた可能性が高いなどと認定し、警察官が安全保護義務に違反した」として秋田県に賠償を命じました。
 
 菅原容疑者は無期懲役刑を受けて受刑中、財産も何もありませんから、秋田県を相手に訴訟をしないと何の意味もありません。

 55歳の弁護士が殺害されて、賠償金が約1億6480万円ということから、収入がおおよそ逆算できます。
 
 1億6480万円の賠償額ということは、弁護士費用が、1割加算されていますから、1.1で割って、約1億5000万円が本来の損害額です。
 
 慰謝料は、一家の支柱として3000万円でしょうから、3000万円を引いて、逸失利益は1億2000万円でしょう。
 
 55歳男性の就労可能年数は14年、ライプニッツ指数9.899です。
 
 1億2000万円を9.899で除して、年間所得1220万円くらいだったということがわかります。
 
 55歳といえば働盛りでしょうから、年間所得1220万円は、少し安いですね。
 
 日本弁護士連合会で、消費者問題対策委員会の委員長をされるなど、公益的活動に時間を費やしていたのでしょう。
 
 ただ、菅原受刑者が無期懲役となり、約1億6480万円の賠償が認められても(但し、事件発生から8年経過していますから、40%(5%×8年)プラスで2億3000万円になります)、亡くなられた秋田弁護士会会員は帰ってきません。
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