本文へ移動

2019年バックナンバー

雑記帳

国選弁護人になることの危険性

 「被疑者」「被告人」「受刑者」の国選弁護人に対する懲戒請求は、非常に多いらしいです。
 そして、その中には、真摯なものもありますが、いわゆる「クレーマー」的なものが圧倒的に多いとか。

 

 その理由について考えてみました。

 

 今はそうでもありませんが、「民事事件の場合、少し前までは、しっかりした紹介者のない事件はやらない」という弁護士さんが多かったです。

 

 しっかりした紹介者がいるということの利点は、
  1 紹介者がいれば、事件もしっかりしているでしょう。
  2 弁護士が依頼者ともめたときに中立的な立場で紛争をまとめてれるということが期待できます。
 原告事件はそうでもないのですが、紹介者のいない事件の被告代理人をすると、「完全勝訴」の場合「勝ったのは不当訴訟だから当たり前。なぜ報酬を支払わなければならない」と契約書を無視する人が結構います。しっかりした紹介者がいなければ、「とりはぐれ」もありえます。
 こちらも、注意はするのですが、利害相反を理由とする弁護士からの紹介事件が「要注意」です。

 

 民事事件の場合も、紹介者のない事件は、それだけの危険があります。

 

 国選弁護人に「紹介者」はいません。
  注意する必要があります。

 

 そして相手は犯罪者(無罪の推定はありますが、確率的には実際の犯罪者ということが圧倒的に多いです)です。

 

 「法律は最低のモラル」といわれますが、犯罪者は「最低のモラル」すら割込んでいる、もっとも道徳的観念のない人でしょう。

 

 そんな人を相手にしたのでは、逆恨みされて懲戒請求されることは十分考えられます。

 

 また、勾留されている人、受刑者は「ヒマ」です。
 時間をもてあましています。
 懲戒請求書を書くことくらい「時間が惜しい」こともなく、簡単に書けます。

 また、同房者、同一の部屋の受刑者からの入れ知恵もあります。
  何も知らないといっても、懲戒手続きくらい、周りの人が教えてくれます。

 

 刺激のない毎日を送っていると、刺激が欲しいものです。
 懲戒請求をすれば、通常1回だけは、懲戒委員会委員が来てくれます。

 ということで、国選弁護人の報酬が「安い」「安い」と嘆くのも結構ですが、いつ誰に「懲戒請求をされるかわからない」という、潜在的な危険があるということも頭においていないと危ないです。

 

 面接内容などは、記録にちゃんとメモしておくことが大切です。「揚げ足」をとられないよう、万全の注意をして弁護に当たるのが賢明ですが、若い人には、その点の配慮が足りない場合があります。

 事務所事件は、依頼者がまともな、それなりに「筋のいい事件」なのでしょうが、小遣い稼ぎに国選事件をすると痛い目にあうことがあります。

TOPへ戻る