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2019年バックナンバー

雑記帳

住民票の抹消

 「住民基本台帳法」 という法律があります。

 

 住民基本台帳法8条には以下のとおり定められています。

 

 「 住民票の記載、消除又は記載の修正(中略)この法律の規定による届出に基づき、又は職権で行うものとする」

 

 通常は、住民票は、転入・転出届に基づき記載されています。
 戸籍と違い、住民票記載の住所は、(少なくとも建前上は)選挙名簿作成など真実と合致していなければなりませんから、届出だけでなく、職権による抹消もありえます。

 

 なお、私が、西宮市に転入届を出したときに、住所地を管轄する西宮市役所(夙川出張所)の市民サービスセンター職員が「本当にこの住居表示のところに家屋があるのか」「他の人は居住していないのか」コンピュータでチェックしていました。

 

 「新築ですね」と職員から言われたのを記憶しています。ある意味、そこまで監視されていると気味が悪かった記憶があります。

 

 これは、地方公共団体によって異なり、機械的に受付ける市区町村もあるそうです。

 

 これに対し、職権抹消されれる場合としては、以下のケースが多いようです。

 

  1 家族等からの申出により消除
  2 実態調査により消除
  3 転出届はしたけれど転入届をしていないため消除

 

 統計があるわけではありませんが、3の「転出届はしたけれど転入届をしていないため消除」が数としては最も多いと思われます。

 

 前の住所地から転出届を出し、新しい住所への転入届けを提出し忘れた場合、「出てるけど入っていない」ということで、前の住所の住民票は「職権抹消」となります。

 

 2は、大阪市西成区のあいりん地区で「2000人以上の日雇い労働者らが居住実態のない住所地に住民登録している」として、まとめて住民登録が「職権削除」されたことで有名です。

 

 あと、1の家族からの申出による削除は、例えば子供が借金をつくって、住民票をそのままにして逃げている場合、なまじ住民票があるから債権者が来るという理由で「調査の上」「職権抹消」となります。

 

 もっとも、本来は、警察に「捜索願」を提出しておけば債権者は来ませんから、他に、理由があるのかも知れません。

 

 離婚調停、離婚訴訟などで、相手方の住所が「住民票の住所」と異なっている場合があります。

 

 DVなどの場合、本当の住所を住民票に出すと、配偶者が、包丁をもって追いかけてくる恐れがある、包丁を持ってこないまでも、押掛けたり、つきまとったり、近隣の人たちに悪口を言いまくって住めないようにするという「異常性格者」はいるものです。

 

 普通、弁護士は、当然のこととして、住民票の住所で調停の申立てをしたり、訴訟を提起します。

 

 代理人は、お互い様ですから「どこに居住しているのか」は聞きませんし、調べません。
 場外乱闘をされてはかないませんから。

 

 一方当事者が、他方依頼者の住所に住んでいないとして地方公共団体に届出て、職権抹消をさせた例もありえます。本当の住所に移さざるをえないだろうという読みですね。

 

 でも、職権抹消されたからといって、本当の住所に移転する馬鹿はいません。実家など差障りのないところに移転します。本当の住所を知られたら何をされるかわかりません。

 

 「職権抹消」されても、住民票は簡単に移せます。
 「転出届はしたけれど転入届をしていないため消除」と同じで、住民登録はできます。
  ただ、前住所欄が「不明」となっているだけですね。
  痛くもかゆくもありません。

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