2012年バックナンバー
大阪市と関西電力
大阪市は、関西電力の発行済株式は約8.9%を保有する筆頭株主です。
大阪市は、平成24年3月18日、大阪府市のエネルギー戦略会議が取りまとめた方針(骨子)を発表し、同方針には「可及的速やかに全ての原子力発電所を廃止」と、原子力発電所全廃が明記しています。
また、「関西電力の全原子力発電所の可能な限り速やかな廃止」や「発電と送電の分離」を求める株主提案をする方針も含まれています。
株主提案権とは、一定の要件を満たす株主が、株主総会が開催される日の8週間以上前に、取締役に対し書面で、一定の事項を株主総会の議案とするよう請求することができる権利のことです。
「総会で議決権の10分の1以上の賛成を得ることなく否決された日から3年間経過していない」場合は、議案の提案をすることはできませんが、8.9%も保有していれば、その他の賛同者も含めれば、提案が「10分の1以上の賛成を得ることなく否決」という事は考えにくいですね。
もっとも、関西電力の株主には、株式29%を保有する金融機関など機関投資家がも多く、機関投資家は「経済合理性」で判断するでしょう。
関西電力の株価が高い方がいいわけです。
関西電力にしてみれば、原子力を再稼働する方が「もうかる」に決まっていますし、株価も高くなります。
また、関西電力の株主として、個人株主は、約3分の1の株式を保有しています。
個人株主も、「経済合理性」で判断するでしょう。
関西電力の株価が高い方がいいわけです。
原子力を再稼働する方が、株価も高くなります。
なお、いわゆる「市民グループ」と称する株主がいます。
株主代表訴訟を提起したり、総会で騒いだりすることが目的であり、関西電力の株価には興味がありません。
1株株主など、株式数は知れています。
当然の話ながら、株式会社は、多数決がものをいいます。
株主総会では、関西電力の利益が最大になり、株価が最大になるように議決されます。
大阪市が、関西電力の利益に反することについては、何を提案しても、結局は否決されるでしょう。
ただ、関西電力としても、発行済株式は約8.9%を保有する筆頭株主を無視するわけにもいかないでしょう。
なお、橋下市長は19日、報道陣に「戦略のない原子力発電所ゼロという提案ではない。原子力発電所ゼロに至るまでの工程を考えたうえで株主提案をやる」と述べたうえ、関西電力に対して今後の需給見通しなどを示すよう改めて求めています。
つまり、関西電力は、今後の需給見通しについて、筆頭株主であり、関西電力の本社があり、停電となれば住民に大きな影響のある大阪市の市長から求められても、受給見通しを示していないということになります。
本来は、大阪市に限らず、利用者である管内の住民に、「節電」「節電」というだけではなく、今後の需給見通しを示すべき責任があると思うのですが、いかがでしょうか。