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2013年バックナンバー

長期金利の上昇

 平成25年5月23日、国債市場は、売りの勢いが強まって、長期金利が急騰し、指標である新発10年債(328回債、表面利率0.6%)の利回りが一時、前日終値より0.115%高い1.000%となりました。
 その後、少し落着いていますが、いわゆる乱高下(らんこうげ)です。

 日本銀行の黒田総裁が平成25年5月22日の会見で、長期金利抑制に向けて対応していく考えを表明したにもかかわらずです。

 長期金利の上昇は、住宅ローンや、企業向け融資の金利を押上げ、持直しつつある国内の景気の足を引っ張る恐れがあります。

 なぜ、長期金利が上がったのでしょう。
 日本銀行は、国債を、「いわば」「買って買って買いまくる」としています。
 理屈からすれば、国債をいくらでも買ってくれる(需要が多くなる)のであれば「国債の価格は上がる」=「長期金利が下がる」ということになりそうです。

 日本銀行や政府が、ちゃんと長期金利をコントロールできるのでしょうか。
 疑わしくなりますね。


 民主党の細野幹事長は、平成25年5月25日「長期金利の上昇は極めて深刻だ。財政への懸念を大きくするような経済政策は良くない」と述べた。
 そういえば、このごろ、民主党のニュースをめっきり見なくなりました。


 財務省は平成25年5月10日、平成24年度末の国の借金残高が前年度末より31兆6508億円多い991兆6011億円になり、年度末では過去最大を更新したと発表しました。

 安倍政権は景気回復を優先し、平成25年1月に約10兆円の経済対策に踏切ったため、借金がさらにふくらみました。平成25度末にはついに1000兆円の大台を超える見通しとなっています。

 991兆6011億円の内訳は、政府が投資家から借りるために発行している「国債」が821兆4741億円、金融機関からの「借入金」が54兆8593億円、為替介入などの資金をまかなうために発行する「政府短期証券」が115兆2677億円です。

 なお、国債と地方債をあわせると、くしくも約1000兆円になります。
 「1000兆円」という数字が一人歩きしていますが、国の債務全体か、国債地方債の合計か、どちらか注意してみるのがいいでしょう。

 単純に、1000兆円に新発10年債の金利をかけたものが利払いとして計算しますと、0.8%で8兆円、1%で10兆円、2%で20兆円、3%で30兆円、4%で40兆円の利払いということになります。

 平成25年度予算では、92兆6115万にのぼる歳出のうち国債費(国債の元利払いに充てられるお金)が22兆2415億円、これを賄うための歳入のうち租税・印紙収入は約43兆0960億円と全体の半分、歳入のうち半分近くを公債金収入(国債等の発行によって得られた収入)によって賄うことが予定されています。
 さらに国債費の中の内訳には、「利払費等」が9兆9027億円となっていますが、概略、1000兆円での1%という計算になるかと思います。

 長期金利が2%となり利払いが20兆円と仮定すると、租税・印紙収入の46%が借金の利子にまわることになり、長期金利が3%となり利払いが30兆円と仮定すると、租税・印紙収入の70%が借金の利子にまわることになります。

 そもそも、日本の国債等の借金が膨大なのに、いままで、ギリシャなどと異なり、さほど問題にならなかったのは、長期金利が低かったことが大きな理由でしょう。

 長期金利のコントロールが効かなくなり、長期金利が際限なく上がったら、日本の財政は、ギリシャ同様破綻して、国債を返済できなくなってしまいます。
 ギリシャと違って、ドイツやオランダが助けてくれるということはありません。

 杞憂であることを願いたいものです。

 さらに、金利が上がれば国債価格が下がります。日本の銀行は、国債を「どっさり」持っています。
 有力都市銀行は、国債暴落危機に備えて、長期国債は売逃げています。
 問題は地方銀行などです。
 銀行がアウトになれば、ただでは済みません。


 日銀の黒田総裁は、平成25年5月26日、このところ上昇傾向にある長期金利について、経済にプラスの側面があるものの、経済状況が改善せずに財政懸念が強まる場合には金融機関に悪い影響が及ぶとして、政府による財政再建が重要だという考えを示しました。
 「経済状況が改善しないなかで財政懸念が強まることを背景に金利が上昇する場合は、金融機関には保有する国債などの評価損という負の影響が強く出る」と述べ、金利の上昇が経済に悪い影響を及ぼさないようにするためには、政府が財政再建を着実に進めていくことが重要だという考えを強調しました。

 そんなことは、最初からわかっています。
 政府の財政再建が難しいのもわかっています。
 いまになって、政府に罪をなすりつける伏線をはるというのは相当ではありません。

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