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2015年~2017年バックナンバー

統計でうそをつく方法

 平成23年のコラムの再掲です。
 
 
 世論調査などのアンケートというものがあります。
 
 新聞などで、政権支持率などを問いうものです。
 
 結構「ばらつき」があります。
 
 アンケートが恣意的になる要素をあげてみましょう。
 
(母集団について)
 
 すべての人に、アンケートをとるわけにはいきません。
  つまり、一部の人にアンケートをとっているわけです。「一部の人」を「母集団」といいます。
 
 母集団は、ある程度大きいものでなくては、統計的意味を持ちません。
 
 また、ランダムでないといけません。
 
 ある政治集会の出席者にアンケートをとることは無意味です。
 
 その昔、アメリカ大統領の選挙のアンケートをとったところ、共和党候補が圧勝する予定が、民主党候補が圧勝したことがあったそうです。電話帳に掲載している人に調査をしたそうで、ランダムはランダムなのですが、当時、電話を有していた人は、一部富裕層で、共和党支持者が圧倒的多数だったらしいです。
 
  今なら、インターネットでのアンケートをしても、正確ではないでしょう。高齢のため、あるいは、経済的理由により、インターネットの利用できない人も多いのです。
 
(設問について)
 
 裁判所の裁判員のアンケートは「誘導的」でした
 例えば、アンケートの質問に前提事実を付加してはいけません。
 
  「法律では、裁判員に選ばれた場合、その役目を果たすことは、義務とされていますが」と質問に加えて書くのは、誘導目的が「ありあり」とみえます。
 
  なお、客観的には誤っていない前提ですら付加してはならないのですから、「客観的ではない主観的な前提事実」や「客観的に誤っている前提事実」はもってのほかです。
また、用語は「中立的」でなければなりません。
 
  「改正」は、ある意味客観的な言葉ですが、「改悪」は、特定の偏見を持っています。
 
  なお、改めることによって「正しくなる」のか「間違った方向に行く」のか、争いがあるときは、「改める」という言葉を用いるのが好ましいのかも知れません。
 
(選択肢について)
 
 選択肢に余分な言葉をつけてはいけません。
 
  また、裁判員制度のアンケートをもってきて申し訳ないのですが、以下の質問は悪い見本です。
 
  「 義務であるなら、参加しようと思う」
  「 義務であるなら、参加せざるをえない」
  「 義務ではあっても、出来れば参加したくない」
  「 義務であっても、参加したくない」
  「 その他(具体的に記入してください)」
 
 選択肢は公平でなければなりません。
 
  以下の質問は「どちらかというと支持しない」をわざと抜いています。支持する方の結果を出したいアンケートでしょう
 
 「支持する」
  「どちらかというと支持する」
  「支持しない」
  「その他」
 
 以下の質問は、多くの回答の予定される選択肢をわざと抜いた例です。目くじらを立てるほどのものではありませんが・・
 
 ドラえもんの道具で思いつくのは何ですか?
 
 「タケコプター」
 「ほんやくコンニャク」
 「スモールライト」
 「その他」
 
  「どこでもドア」が抜けていますね。その他にチェックを入れて、具体的な道具を書き込むのは面倒です。「どこでもドア」を選択肢に入れれば、「その他」の合計を上回るかもしれません。
 
(統計の発表方法は客観的ではありません)
 
 大がかりなアンケートは、さすがに無理ですが、アンケートをとる側に都合が悪ければ、発表しないという選択肢もあります。
 
  また「発表しない」は露骨でも、都合がよければ「1面トップ」、都合が悪ければ「社会面ベタ」ということもありえます。

  なお、ずいぶん昔の本ですが「統計でウソをつく法 数式を使わない統計学入門」(ブルーバックス)を一読されることをお勧めいたします。
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