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2015年~2017年バックナンバー

三角関数

 鹿児島県の伊藤祐一郎知事が、県教育委員らが参加した会議で「女性委員に怒られるけど」と前置きした上で「高校教育で女子にサイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか」と発言したことがあります。
 
 すぐに「自分自身も使ったことがないよねという意味。口が滑った」と述べて訂正しました。

 

 「女子」と特定したのが悪いのですね。男女差別発言です。

 「高校教育でサイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか」と言えば、さほど、問題はありませんでした。

 男女問わず、社会に出て、三角関数を使うことは、あまりないと思います。


 この手の話は、大学の法律の講義の笑い話でもあります。

 某大学法学部の先生が、某女子短大に出張講義をして「『相殺』の読み方と意味を述べよ」という問題を出したところ、回答に、読みは「あいごろし」、意味は「お互いに殺し合うこと。つまり『心中』」という答えがあったという類いです。

 

 「女子短大」と特定したのが悪いのですね。男女差別発言ですし、学歴差別発言です。

 男女問わず、わからない人はわかりません。短大でも、四大でも同じく、わからない人はわかりません。

 

 ただ「相殺」を「そうさつ」と読む人が結構います。「減殺」も「げんさつ」と読む人がいます。

 「殺」という漢字は、「さつ」(漢音)=「ころす」(例えば「殺人」)、「さつ」(漢音)=「そぎとる」(例えば「殺風景」)、「さい」(呉音)=「へらす」(例えば「相殺」「減殺」)と3つの意味があるということを知っている人は多くありません。


 法律家が、三角関数を自ら使うということは多くないと思います。

 交通事故関係の鑑定書に記載されているのを見ることがあるだけという人が大多数でしょう。
 私も、大多数の人と同じです。

 

 法律家が「そうさつ」「げんさつ」と読んだ時点でアウトですね。

 「相殺」は、実務上、しょっちゅう使いますし、「減殺」は「遺留分減殺」という単語で出てきます。

 ただ「遺留分減殺」は、減殺の割合は知っていても、具体的事案となると、とんでもないミスをする法律家がいます。


 学校で習った数学は、社会に出て役立っているでしょうか。

 

 幾何で「三角形の2辺の和は他の1辺より長い」という定理があります。

 幾何が、実生活で役に立つのは「寄り道をするのと、まっすぐ帰るのではどちらが早いか」くらいで、「寄り道せずに、まっすぐ帰った方が早い」ということがわかりますが、ただ「そんなことなら犬でも知っている」という「つっこみ」が入ります。


 法律家で、関数電卓の「sin」「cos」「tan」「π」「!」「ln」「log」「e」「^」「√」の関数を使う人は多くないと思います。

 ただ、交通事故の事件を扱う際、微分・積分の知識は必要ですね。
 初速度、加速度、速度、移動距離などは、いちいち鑑定書を書いてもらうわけにはいきません。自分で、準備書面をかかないわけにはいきません。
  そのとき、一から勉強しなおすというのも、非効率的なことです。

 

 あと、集合や確率の知識が、結構必要となることがあります。


 私自身は、高等学校の成績は、数学、理科(物理・化学)、英語、国語、社会の順によく、医学部に進んで医師になろうと考えたこともありましたが、ケアレスミスで患者を死なせてもいけないということなどの理由で断念し、医学部の次に難しい法学部に進学しました。

 

 正解だったと思います。

 

 裁判官や弁護士は、ケアレスミスをしても人は死にません。

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