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2015年~2017年バックナンバー

敵基地攻撃能力

 平成29年8月29日、北朝鮮の弾道ミサイルが日本上空を通過しましたが、防衛省・自衛隊は「わが国にむけて飛来する恐れがない」(小野寺五典防衛相)と判断し、具体的な迎撃行動には至りませんでした。
 
 日本は二段構えのミサイル防衛体制(BMD)をとりますが、限界も指摘されています。
 
 まず、海上自衛隊イージス艦からの「SAM」でのミサイルの迎撃を試み、迎撃できないミサイルは、地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」での迎撃をはかります。
 
 あと、イージスアショアの配置も検討されていますが、「SAM」でのミサイルの迎撃です。
 
 「THAAD」の配備予定はありません。

 今のミサイル防衛だけでは打ち落とせないミサイルがあるということは、発射される前に発射基地を攻撃するしかありません。
 
 法的には、自衛権の行使ですから問題はありません。
 
 平成29年度に入ってから、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、日本の排他的経済水域内に落下した。日本に切迫した危機が迫っている時、敵のミサイル発射基地などへの日本の攻撃能力、いわゆる敵基地攻撃能力の保有についての世論調査です。
 
産経・FNN合同世論調査(平成29年3月)
「敵基地攻撃能力の保有」
保有すべきだ29.1%
保有を検討すべきだ46.0%
保有すべきではない20.2%
他4.7%
 
 攻撃能力により日本の国土に危険が及ぶ可能性を低下させられるほか、抑止効果も期待できる。能力保有に積極的な政府関係者は「憲法9条で許されるのはミサイル基地などの策源地を攻撃することだけだが、敵国の指導者は『自分も狙われるのではないか』と疑心暗鬼になる。独裁国家に対しては効果的なカードだ」と指摘されています。
 
 攻撃能力の抑止効果でミサイル発射を思いとどまらせることに成功すれば、比較的安上がりにもなります。
発射するミサイルは安価ですが、迎撃するミサイルはべらぼうに高価です。
 
 一石三鳥で、いいことずくめのようにみえます。
 
 安倍首相は「国民の生命と財産を守るためには何をすべきか。さまざまな検討を行っていくべきだ」と述べています。

 もちろん、危機が差し迫った中での先制攻撃は国際法上も認められていますが、極端な平和主義の影響が強い日本では、自衛隊が「第一撃」を行うことに政治的リスクが伴います。
 
 攻撃目標の位置を特定するための正確な情報収集も課題です。日本だけで情報を集められるでしょうか。
 情報収集衛星や無人偵察機の活用、日米韓の情報協力など情報収集態勢の確立が欠かせません。
 
 また、保有を決めてからも運用研究や装備の調達、施設整備などに数百億円以上の費用と5~10年程度の時間を要するとみられます。
 
 アメリカ内には、日本が戦略的に「自立」することに対する警戒も根強く、攻撃能力保有に至る過程ではアメリカ政権の理解も必要となります。
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