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2015年~2017年バックナンバー

建物の耐震基準

 平成29年4月、東京都が、老朽化した分譲マンションの建替え促進のため、容積率を緩和するとの報道がなされました。
 
 昭和56年(1981年)5月までの「旧耐震基準」の建物が対象となり、建替え後の戸数を増やせるようにして民間デベロッパーが参画しやすくする狙いです。
 
 容積率の緩和で都市開発を誘導する「総合設計制度」の運用を見直し、土地ごとに定められた「基準容積率」に上乗せされる「割増容積率」の上限を、これまでの300%から400%に高めます。
 
 マンションを多く供給できることになり、建替え事業の収益性が高まり、不動産会社などが再開発に加わりやすくなります。
 
 
 現在の建物の耐震基準は昭和56年(1981年)に施行されました。
 
 もちろん、それ以前の旧基準の建物も従来通り居住できます。
 
 ただ、東日本大震災などの大規模地震で、老朽化した建物に大きな被害が出ていることから、国は旧基準の建物の建替えを促進しています。
 
 平成25年には、デパートやホテルなど不特定多数の人が集まる大規模施設に耐震診断を義務付ける改正耐震改修促進法を施行しました。
 
 自治体は耐震基準に満たない施設名を公表し始め、事業者に改修や建替えを促しています。
 
 
 一方、分譲マンションは区分所有者の合意形成が難しいとされています。
 
 建替えがなされた一部の事例は、立地の良さなどで収益性が見込め、民間の不動産会社が事業に参加するケースなどに限られていたとされています。
 
 マンションは、入居時に、あるマンションには、似たような所得や資産の人が住み始めるのですが、しばらくすると、所得が増えて資産が増えた人と、所得が減り資産もなくなる人に分化していきます。
 
 所得が減り資産もなくなった人が、耐震基準に満たないマンションであっても、改修や建替えに応じることは難しくなってしまいます。
 高齢者が多いマンションでは資金の確保も難しく、全世帯合意はハードルが高いことになります。
 
 都市再生法を活用したマンションなどの再開発事業は、自治体の承認が前提とはなりますが、全世帯の3分の2の合意に緩和されます。
 
 なお、都市再生法の再開発以外の建替えは、区分所有法などの法律に基づき、全世帯の5分の4の合意が必要なままです。

 1981年(昭和56年)の建築基準法改正で「震度6強~7でも倒壊しない」耐震性が義務化されました。
 
 しかし、これらの点は2000年(平成13年)までは規定が具体的に定められておらず、問題が潜んでいる恐れがあります。
 
 なお、1981年(昭和56年)6月1日以降に完成した住宅であっても、古い基準で建てられた住宅である可能性もあります。
 
 建築確認が、1981年(昭和56年)6月1日より前になされていれば、旧耐震基準である可能性があるわけです。
 
 目安として、1982年(昭和57年)以降に完成した住宅であれば、新しい耐震基準で建築された可能性が高いですが、マンションであれば、工期がもっと長いですから、1983年(昭和58年)以降と考えておいた方が安全です。
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