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2015年~2017年バックナンバー

トリチウムの放出

 平成29年7月14日、川村隆・東京電力会長は、東京電力福島第1原発で汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ処理水(トリチウム水)を、海洋放出する方針を、東京電力会長が明言したとする共同通信の報道について、「最終的な方針を述べたものではない」として否定する声明を発表しました。
 
 共同通信は平成29年7月13日、川村会長が同社を含む複数の報道機関のインタビューで、トリチウム水の海洋放出について「(東京電力として)判断はもうしている」などと述べたと報道していました。
 
 汚染水は、溶けた核燃料が残る原子炉建屋に地下水が流入して毎日発生しています。
 
 平成25年3月から、福島第1原発の汚染水(約60種の放射性物質を含む)処理で東電が稼働させている「多核種除去設備(ALPS)」により、放射性物質を処理しています。
 
 しかし、トリチウム(三重水素)だけは、唯一除去できていません。
 
 トリチウムは放射性物質の1種ですが、水素と性質が似ているため、それが溶け込んだ水から分離できないままでいます。
 
 平成28年4月時点で半減期12年のトリチウムを含んだ廃水は現在約80万トンが保管タンクにためられていますが、現実的な解決策は、希釈して海洋に放出するしかありません。
 
 「希釈して海洋放出」のシナリオは、1日400トンのトリチウム汚染水を、告示濃度の1リットル当たり6万ベクレル以下になるように海水と混ぜて希釈したうえで海に流すというものです。
 
 平成28年4月時点で存在する80万トンの処分終了までに要する期間は88カ月(約7年)と算定されています。
 
 もっとも簡単にいきそうにもありません。
 
 現在でも、東電は地下水バイパスやサブドレンを通じてくみ上げた地下水を海に放出しているのですが、その際の基準値は漁協との取り決めにより1リットル当たり1500ベクレルに設定しています。
 
 提案された告示濃度の6万ベクレルはその40倍に上ります。
 
 ですから、漁協との合意のうえで40倍も基準を緩めることが前提になります。

 原子力に関わる多くの専門家は「健康や環境に与える影響はないに等しい」と声をそろえています。
 
 イギリスなどでは、年間2500兆ベクレルのトリチウムを海洋に放出しています。
 
 1リットルあたり6万ベクレルの汚染水が流出したからといって、大したことはないように思えます。
 
 しかし、トリチウムが放射性物質であることに変わりはありませんから、ただでさえ、東北地方の水産物は今でも買い控えや輸入禁止措置に見舞われているだけに、復興途上の被災地が受けるダメージも大きいでしょう。

 民主党政権下で発生した、東日本大震災と福島第一発電所の爆発による放射能汚染は日本に大きな損害をもたらしました。
 
 安倍首相は、IOCの最後のプレゼンテーション(presentation)で、福島原発事故についてそう語り、2020年の東京オリンピック開催の決定打になったのだと言われています。
 
 “The situation is under control. It has never done and will never do any damage to Tokyo.”

 まあ、東京には影響はないでしょうね。
 
 廃炉にしても、汚染水にしても・・
 
 そのため、最大の電力消費地である首都圏から遠く離れた福島に原子力発電所をつくったのですから。
 
 漁業補償をして、汚染水を希釈して流出させるほかないでしょうね。
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