本文へ移動

2015年~2017年バックナンバー

自作自演

弁護士の懲戒が多くなっています。
 あまり新鮮みはありません。
 一風変わった懲戒がありました。

 第一東京弁護士会が、平成26年12月24日付で、懲戒しないとした処分に対し、懲戒請求者から異議の申出があれ、日本弁護士連合会は上記懲戒処分を変更しました。

 懲戒を受けた弁護士は、西村あさひ法律事務所という法律事務所に所属する、岩倉正和弁護士、佐々木秀弁護士、森倫洋弁護士の3名です。

 要約は「3人の弁護士は、株の誤発注をめぐる損害賠償訴訟の原告側の代理人を務めた。東京地方裁判所は平成21年12月、請求の一部を認める判決を出したが、原告側は不服として控訴し、3人の弁護士は、4つの法律雑誌に判決の論評を載せるよう働きかけ、批判的な記事を書いた。記事は、匿名や「編集部」の名義で掲載された。その後、弁護士らは裁判所に出す控訴状に記事を引用し「すでに公刊物でも指摘されているが、一審判決は様々な矛盾点や疑問点を内包している」としたというものです。

 処分の理由の全文は、以下のとおりです。
 1 本件は被懲戒者A弁護士、B弁護士及びC弁護士(以下「被懲戒者ら」という)が訴訟代理人として関与した事件の一審判決について批判する論評を法律雑誌であるD誌、E誌、F誌及びG誌に匿名又は編集部名義で掲載させた行為(懲戒事由1)並びに上記事件の控訴状にD誌の記事を引用して「既に公刊物(D誌○号○頁以下)においても指摘されているが原判決は様々な矛盾点、疑問点を内包している」と記載した行為(懲戒請求2。以下本件引用という)が問題とされた事案である。
 2 懲戒請求事由(1)につき第一東京弁護士会(以下「原弁護士会」という)は被懲戒者らが自らに執筆させるよう要求したとは認められず、出版社側における執筆者名義の選択を困難にする不当な要求をしたとは認められない。公正中立な編集部などを装い批評記事を掲載したもので、妥当性が疑われるが組織的、計画的とはいえず執筆内容も訴訟を有利に導くとはいえない、等の理由から弁護士の品位を失うべき非行に当たらないと判断した。
 しかし、被懲戒者らが出版社へ送信したメールの内容や非顕名での執筆を前提に編集部とやりとりした事実からみれば判決文の提供だけでなく被顕名での論評の執筆、掲載をも目的として多数の法律雑誌に積極的に働きかけをしたと認めざるを得ない。執筆内容も被懲戒者の依頼者側に不利益な部分の問題点を指摘するものとなっていることは否定できず、そのような記事が複数の法律雑誌に匿名又は編集部名義で掲載されることが訴訟を有利に導くものではないとはいえず、行為の組織性、計画性も否定できない。懲戒請求事由1の行為は訴訟の一方当事者の関係者や編集部を装い、批評記事を掲載したもので、読者の信頼を裏切るものであり弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
 3 原弁護士会は懲戒請求2につきフェアーな姿勢が期待される弁護士としての品位に悖るが、組織性や計画性はなく、裁判官の判断に影響することは考え難いとして弁護士の品位を失うべき非行に当たるとはいえないと判断した。
 しかし、控訴状は裁判所に提出する重要な書面であり慎重な検討に基づいて作成されたはずであるから、組織性や計画性を殊更に問題にするのは相当ではない。本件引用は裁判官に参照を求める趣旨であり、自ら執筆した記事を第三者によるは判決批判であるかのように引用しているから裁判官を誤解させる行為であり直ちに判決に影響する可能性は少ないとしてもフェアーな姿勢が期待される弁護士として品位を失うべき非行に該当する。

 自作自演ということですね。

 「そこまでして勝ちたいか」という気がしますね。

 法律雑誌に、判決の論評を書くというのは、さほど難しくありません。
 裁判官時代に、何回か依頼されたこともありました。ほとんど断わっていましたが。

TOPへ戻る