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2015年~2017年バックナンバー

元号

元号法(昭和54年6月12日法律第43号)があります。
「1 元号は、政令で定める。
2 元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める」
というシンプルな法律です。
天皇は時間の支配者という考えに基づいていて、現在、元号が用いられているのは日本だけです。
ただ、他は西暦だけかというとそうでもなく、イスラム教国ではイスラム暦ですし、台湾(中華民国)は民歴(中華民国が成立した1912年を紀元(元年)とする)が用いられています。
裁判所は役所なので、基本的に元号を使います。
事件番号は、大阪地方裁判所・平成28年(ワ)第12345号というように、元号であらわされます。
ですから、裁判官も、裁判所に文書を提出する弁護士も、通常、元号を利用します。
もっとも、元号が必須なのは、事件番号のみで、他の部分(提出日や本文など)は、西暦で書いても何も言われません。提出日を西暦で書くと「左翼系」と思われるかも知れません(冗談です)。なお、使えるのは元号と西暦のみ、イスラム暦や皇紀で書くわけにはいきませんので念のため。
私などは、裁判所に提出する書類はもとより、一般的な文章も元号で書きます。
それの方が、慣れていますからわかりやすいですね。
また、昔よくあった過払金請求などでは、現在でも「昭和」がでてきますし、昭和と平成が一緒の文章になるとわかりづらいので、別表の計算式にあわせて、西暦で統一することもあります。
私は、提出年月日と請求の趣旨の記載は元号にします。
相手方弁護士の準備書面に西暦が書いてあれば、鉛筆で小さく元号を併記しておきます。
時々、確定記録をみていると(自分のした事件以外の関連事件)、裁判官が、西暦で書かれた年号の上に、鉛筆で元号を小さく併記していることがあります。考えることは皆同じということか、私が元裁判官だからかはわかりません。

和解調書に10年の分割の約定を定める場合「平成28年8月末から平成38年7月末まで、毎月末日限り金10万円を支払う」と記載することになります。
今上陛下の生前退位の報道をみていると、平成38年などは存在するのだろうかと疑問になりますが、新しい元号に換算すればいいだけの話です。
私は、昭和55年から平成2年まで裁判官をしていましたが、和解調書に昭和70年などという和解条項が、平気で出てきていました。
昭和64年=平成1年ですから、1+6で平成7年と読み替えることになります。
元号による年と、西暦による年は換算表がありますから間違いはありませんが、昭和70年=平成7年なのかは自信がありません。

今の人は、生年月日を西暦でいえるのが普通ですよね。
昔はそうでもありませんでした。
留学している判事補は、出張してこられる、裁判所の「えらいさん」のアテンドをすることもあります。
自分の生年月日を西暦でいえないと怪しまれるからという理由で、西暦の生年月日を暗記してきたという人は結構いました。
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