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2018年バックナンバー

雑記帳

国民年金の繰上げ受給

 現在、国民年金(基礎年金部分)の受給開始は、原則として65歳ですが、早くて60歳から繰上げ受給ができますし、遅くて70歳から繰下げ受給ができます。
 
 厚生年金や共済年金は、ごく希なケースを除き、選択できません。
 
 国民年金(基礎年金部分)の繰上げ支給は、60歳、65歳、70歳の3択ということではなく、1か月単位で選べます。
 
 例えば、63歳で余命数年と医師から宣告されたら、すぐに繰上げ受給の手続きをしないと損です。
 
 減額の割合は、「0.5%×繰り上げた月数」、増額の割合は「0.7%×繰り下げた月数」で計算されます。
40年=480か月かけ続けた人が満額で、年額77万9300円(平成29年度)です。
 
 たいていの人は、満額まではいきません。
 
 いつから給付を受けるのが得かは、何歳まで生きるか(年金を受け取る年数)によります。
 
 受給資格のある人なら誰でも、繰上げで60歳から受給なら「76歳8か月」よりも長生きすると、普通に65歳から受け取るよりもトータルの受給額で損することになり、繰下げで70歳から受給なら「81歳10か月」よりも長生きするとトータルの受給額で得することになります。
 
 まず60歳になったときに考えますよね。
 
 ただ、あと何年生きられるかは、単純に平均寿命から60を引いてはいけません。平均寿命は0歳児の平均余命にすぎません。
 
 平成28年時点において、男性の60歳の平均余命は23.67年ですから(男性の65歳の平均余命は19.55歳)、60歳の選択時に平均83.67歳まで生きることになり、女性の60歳の平均余命は28.91年ですから(女性の65歳の平均余命は24.38歳)、60歳の選択時に88.91歳まで生きることになります。
 
 60歳時に選択するとして、損益分岐点の76歳8か月と比較すると、男性の平均83.67歳と計算されて損、女性の平均88.91歳と計算されてもっと損ということになります。
 
 繰上げ受給を選択する人は、確率的に損ということになりそうです。
 
 ただ、繰上げ受給の最大のメリットは、早く年金が手にできることです。
 
 とくに、60歳から65歳は、収入が少なくなる年代なので、現金を手にできる繰上げ受給はありがたい制度です。
 
 しかし、繰上げ受給にはデメリットもあります。
 
 最大のデメリットは年金の減額(60歳時に繰上げ受給を選択すると70%しかもらえません)ですが、障害基礎年金を請求することができなくなります。
 
 特に、障害基礎年金は、後遺障害をカバーする年金であり、例えばペースメーカー、人工透析、在宅酸素投与(肺気腫など)などの病気による障害も対象になりますから利用する可能性は高いですね。
 
 ただ、健康寿命ということを考えたら、別の考えもできます。
 
  健康寿命とは、その年齢まで健康上の問題がなく、日常生活を普通に送れる状態を指します。
 
 日本人の健康寿命を見ると、平成27年時点で、男性は約71歳、女性は約74歳となっています。
 
 繰下げして毎月の年金額を少し増やしても、体の自由がきかなくなってからでは趣味や生きがいにお金を使うことは難しいですし、それならば、繰上げ受給で健康なうちにお金をもらうことを考えてもいいでしょう。
 
 子どもにとっては迷惑なことでしょうが・・・
 
 現実にはどうでしょう。
 
 厚労省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(平成27年度)によれば、繰上げ受給をしている人の割合は「35.6%」でした。
 
 年金受給者の3人に1人は繰上げ受給しています。
 
 なお、本来の年齢で受給開始した人は63.1%、繰下げ受給している人は1.4%でした。
 
 ただ、現時点での受給者ですから、60歳の人、70歳の人、80歳の人、90歳の人などすべて含んでいます。
その昔は、60歳になると収入がなくなり、繰上げ受給をしている人が多かったため、繰下げ受給している人が多かったことが影響していて、現在は、繰上げ受給をする人が少なくなってきています。
 
 60歳時点で、自分の余命がわかるはずはなく、いずれにせよ「ギャンブル」です。
 
 ただ、70歳支給を選択しようと思っていたら、69歳で急死して全くもらえないということがありえます(遺族は死亡一時金はもらえます。保険料を納めた月数に応じて12万円から32万円)から、繰下げ受給は選択しにくいですよね。
 
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