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2018年バックナンバー

雑記帳

なぜ弁護士の書く横書き文章の読点は「、」でなく「,」が多いのか

 私は、裁判所に訴状や準備書面を提出するときに、句点は「。」、読点は「、」を用います。

 

 裁判所の判決書は、例外なく、句点は「。」、読点は「,」になっています。

 

 理由は何でしょうか。

 

 昭和27年4月4日、公用文について、「公用文作成の要領」が内閣官房長官より発せられました(内閣閣甲第16号)。

 

 「公用文作成の要領」では「句読点は、横書きでは「,」および「。」を用いる」となっています。

 

 平成13年1月1日、裁判文書がB4縦書きからA4横書きに変更されました。

 

 家庭裁判所など一部では、横書きが用いられていましたが、地方裁判所では縦書きですが、句読点は「、」「。」でした。

 

 私自身は裁判官を10年しています。

 

 平成2年4月に退官する前の一年間、弁護士になったときのために、家庭裁判所の事件の一部を、無理をいって担当させてもらいました。

 

 といっても、少年事件に興味はなく(私は弁護士になってから、少年事件はやっていません)、相続や婚姻費用などの乙類事件(現在「家事事件手続法別表第2に掲げる事項に関する調停」「別表第2調停」)の調停と審判を、週1回担当しました。

 当時離婚は、地方裁判所管轄だったので、いやというほど担当していました。

 

 ですから、相続や婚姻費用などの審判書は、横書きで書いているのですが、なにもわからないまま、句読点は「、」「。」を用いていました。

 私は、昭和61年から、判決、決定、審判などは、すべてワープロで書いていました。

 

 

 裁判所は、地方裁判所の事件も、平成13年1月1日に横書きとなり、「公用文作成の要領」に従うかたちで「,」が用いられることになったのです。

 

 なお、平成27年4月に施行された「行政文書の管理に関するガイドライン」でも「公用文作成の要領」は公用文の統一性を保持するための基準として挙げられています。

 

 ただ、現在(平成30年5月)現在、裁判所や法務省以外の他の省庁ではむしろ「、」が用いられるケースの方が多いというのも事実です。

 昭和27年の「公用文作成の要領」自体に強制力はありませんが、裁判所では律儀に用いられています。

 

 弁護士は、昭和27年の「公用文作成の要領」に拘束されません。

 

 弁護士は、「,」を使うのは義務ではありませんが、ざっと見て、相手方弁護士の書面は「,」ではなく「、」が多いですね。
 「,」と「。」の混在は奇妙ですから。

 

 名探偵コナンというアニメをご存じでしょうか。

 

 コナンが居候している毛利探偵の別居している妻が旧姓の「妃(きさき)」名を用いて弁護士をしています。

 

 妃弁護士が誘拐され、LINEに本当の妃弁護士と犯人が、いずれも妃弁護士の名前でアクセスするのですが、コナンが、弁護士は「,」を使うので、「,」を使っているのが本物だと「名推理」をする場面が出てきます。

 

 若い弁護士は、司法修習時代に、裁判所の修習もして、「,」を使っていますから、「,」を使う人が増えてきていることは事実です。

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