2018年バックナンバー
雑記帳
関西3空港問題
平成30年9月4日、台風21号が関西に上陸し、関西国際空港とりんくうタウンを結ぶ道路・鉄道併用橋がタンカーの衝突で破損し、第1ターミナルとA滑走路(陸に近い方)が水没するなど、大きな打撃を受けました。
関西国際空港で当面、運行本数が限られると見られることから、関西のほかの2空港である伊丹空港、神戸空港に国際線を受け入れる体制を確保する方向で、国土交通省が地元自治体などと調整に入っています。
関西国際空港は、もともと、伊丹空港(大阪空港)が騒音のために、飛行差止め訴訟や騒音による損害賠償請求がなされ、住民の一部勝訴により、使い勝手が悪くなり、騒音公害が出ない新空港を造ろうというところからきています。
昭和44年5月には、候補地として播磨灘、神戸沖、泉州沖3か所が選定されました。
調査と審議はその後も続けられ、昭和50年まで調査と審議が続きました。
普通常識的に考えれば、神戸沖に、関西国際空港クラスの人工島による空港を造るというのが常識的でしょう。
しかし、昭和47年に神戸市議会は、神戸沖空港反対決議を賛成多数で可決していて、また、反対派の宮崎辰雄市長が再任されました。
となりますと、関係地方自治体が、受入れを表明していた泉州沖が、新空港建設に選ばれるということは必然でした。
昭和62年に、泉州沖に、15ヘクタールの人工島と空港ターミナルビル1棟、滑走路1本(現在の「A滑走路」)の建設を含む、関西国際空港の第一期工事が着工されました。
平成6年9月4日に開港しました。
世界で初めての、すべてが人工島からなる海上空港であり、旅客・航空貨物の両方で日本初の24時間運用可能な空港です。
平成11年から2期工事として528ヘクタールの第二期空港島の造成と4000mの第2滑走路(B滑走路)などの建設に着手し、2007年に、供用が開始されました。
関西国際空港は「大阪国際空港」ではなく「和歌山国際空港」であると言われるほど和歌山県に近く、和歌山県民のパスポート保有率は、はねあがりました。
逆に、京阪神地区に住む住民にとっては不便ということになります。
関西国際空港と国内線専用の伊丹空港(大阪空港)とが併存するようにみえました。
ところが、昭和57年に、新空港建設反対を表明した宮崎市長自らが、運輸省に「神戸沖空港試案」を提出し、神戸市議会でも、全会派が「空港反対決議」の転換意見書を採択しました。
平成11年に神戸空港を建設すべく埋立ての着工がなされました。
平成18年に神戸空港の供用が開始されました。
もっとも、2500メートルの滑走路が1本という貧相な空港です。
結局、神戸市議会が引っかき回して、関西国際空港、伊丹空港、神戸空港の3空港が併存する形になりました。
平成30年9月4日の台風21号による関西国際空港の損壊により、伊丹空港(大阪空港)、神戸空港に、国際線の一部移転の話が持ち上がりました。
伊丹空港(大阪空港)、神戸空港も、本音は、国際線の運航もしたいようです。
といっても、国際線運用には、入国審査や検疫が必要です。
関西国際空港の復旧は、思いの外早かったようです。
平成30年9月21日までに、関西空港の第1ターミナルが、全面的に営業を再開しました。台風が襲来した平成30年9月4日以来、17日ぶりです。
すでに再開している第2ターミナルを含め、平成30年9月21日から、元通りの発着になっています。
空港と対岸を結ぶ連絡橋鉄道(JR西日本・南海電鉄)は平成30年9月18日に運転を再開していて、タンカーの衝突で損壊した連絡橋道路の全面復旧は来春のゴールデンウィーク前になる見通しです。
伊丹空港(大阪空港)、神戸空港も、残念なことですね。
ただ、伊丹空港(大阪空港)、神戸空港に入国審査や検疫の施設を整えて、恒久的に、国際線の一部移転することを真剣に検討した方がいいかもしれません。
現実に、伊丹空港では、1日1便、香港便を運航する予定です。
本当の地方空港でも、インバウンドを期待して、入国審査や検疫の施設を整えています。
そう難しいことではありません。
関西国際空港の脆弱性は、今回の台風で露見しました。
再び何かの天災が生じたとき、いつでもバックアップできる体制をつくっておくのが賢明かと思います。
南海トラフ地震が起きると、もたないかも知れません。
そう考えたら、なぜ、関西国際空港を、神戸沖につくらなかったのかという問題も生じますね。
神戸沖なら、南海トラフ地震に対して、100%安心とはいえませんが、泉州沖よりずっとましでしょう。