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2019年バックナンバー

雑記帳

ドイツ・チューリンゲン州でCDUが第三党に

 令和元年10月27日、ドイツでは旧東ドイツのチューリンゲン州で、州議会選挙が行われました。
 
 宗教革命の父であるマルティン・ルターの生地です。
 
 メルケル連邦首相の属する保守のキリスト教民主同盟(CDU)が第1党から第3党に転落し、オポチュニスト党の「ドイツのための選択肢」(AfD)が第2党に躍進しました。
 
 選挙前は、旧東独の共産党の流れをくむ左派党(Linke)は29議席、中道左派の社会民主党(SPD)は8議席、環境政党である緑の党(Grüne)は5議席で、合計42議席となり、3党による過半数(90議席中46議席)を獲得できませんでした。
 
 CDUは大幅に減少し、第1党から第3党に転落して21議席、「ドイツのための選択肢」(AfD)が第2党となる22議席、自由民主党(FDP)が議席復活で5議席を得ました。
 
 ドイツの政党は、左派から右派に、以下の通りです。
 
 左派党 緑の党  SPD FDP CDU/CSU ドイツのための選択肢
 
 一番の左派と、一番の右派が、第1党2党を占めたということですね。
 極左、極右という政党ではありませんが・・・
 
 先のブランデンブルク州とザクセン州に続き、旧東ドイツ地域でメルケル首相率いるCDUの求心力の低下は顕著です。
 
 過半数を確保しての連立政権の形成は困難な様相を呈しています。
 
 FDPは与党3党への合流の意思がありません。緑の党と「水と油」のようなものです。
 どの政党も、「ドイツのための選択肢」(AfD)とは連立しません。
 
 CDUは選挙前には左派党との連携はしないと表明していましたが、今回の選挙結果を受け、左派党との協議を拒否しないよう求める声も上がっています。
 
 CDUが連立に加わらなければ、どう計算しても、左派党、SPD、緑の党による3党連立の少数与党政権になってしまいます。
 
 「ドイツのための選択肢」は、令和元年9月、旧東ドイツの2つの州で行われた議会選挙でも第2党に躍進していて、旧西ドイツとの経済格差がいまだに解消されない現状や、難民の受け入れをめぐるメルケル政権の政策への不満を受け皿に支持を広げているとみられます。
 
 メルケル政権としては得票率の下落に歯止めがかからない状況が続いていて今後、連邦政府レベルでも、国政での政権運営にどのような影響が及ぶのかに注目が集まっています。
 
 なお、メルケル連邦首相の属する保守のCDU/CSUが、政権与党でいられるかは、連立を組むSPDにかかっています。
 
 ドイツ連邦議会は、総議席709議席(過半数355議席)のうち、CDU/CSUが246議席、SPDが153議席、「ドイツのための選択肢」94議席、FDPが80議席、左派党が69議席、緑の党が67議席を占めています。
 
 SPDは、現在CDU/CSUと連立を組んでいますが、下野論も根強く、令和元年11月に実施される決選投票は予断を許しません。
 下野派が党首選で勝利すれば、SPDは野党に回ります。
 
 「ドイツのための選択肢」(94議席)は、どの政党にも連立を組んでもらえません。
 
 FDP(80議席)と緑の党(67議席)は連立を組みません。
 
  SPD(153議席)が野党に回れば、「ドイツのための選択肢」、FDP、緑の党(67議席)をあわせて394議席となり、左派党(69議席)が与党であろうが野党であろうが(CDU/CSUは右から2番目、左派党は最左翼で、連立の可能性はないに等しいです)、CDU/CSUは少数政権となります。
 
 下野派が党首選で勝利してSPDが野党に回わっても、メルケル内閣の不信任案は可決されません。
 
 ドイツの基本法上、内閣不信任案は、総議席の過半数で合意した連邦首相候補を定めないと提出できないことになっていて、連邦首相候補が合意できるはずはありません。
 
 メルケル内閣の信任案否決ということで、総選挙となるでしょう。
 
 メルケル連邦首相は、CDUの党首を降りていて、次の選挙では首相候補になりませんから、退任ということになります。
 令和元年9月1日、旧東ドイツのザクセン州(州都ドレスデン)とブランデンブルク州(州都ポツダム)で、地方議会議員選挙がありました。
 
 旧東ドイツは、平成2年(1990年)10月3日、ドイツ連邦共和国(西ドイツ)に吸収されています。
 
 両州とも、ポピュリスト政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進しました。
 
 AfDはザクセン州で得票率を27%と前回選挙(2014年)より3倍近く議席を伸ばし、ブランデンブルク州でも23%と倍増させ、両州とも、第2党の地位を得ました。
 
 2013年の結党当初は「反ユーロ」が主たるスローガンでしたが、移民制限、ナショナリズムなどを唱えて支持率を伸ばしてきました。
 
 ただ、AfDの、旧西ドイツ地域の諸州では10%程度ですが、旧東ドイツ地域の諸州では20%~30%にも達します。
 
 今回のザクセン州とブランデンブルク州は旧東ドイツの州です。
 
 なぜ、旧東ドイツ地域でナショナリズムが強いのでしょう。
 
 経済不況が原因の1つです。
 旧東ドイツ地域は、ドイツの中の劣等生のままです。
 
 あと1つ、過疎化があげられています。
 敗戦直後に、ソ連軍が進駐してくると共産主義を嫌う人が旧西独地域に逃げました。
 次は「ベルリンの壁」の建設直前の1960年前後に、手に職を持つ熟練工などが高給与と自由を求めて逃亡しました。
 そして平成元年(1989年)の壁崩壊後は、チャンスを求めて若者が去りました。
 有能な人材が少なくなり、残された住民には「負け組」という敗北感が染みついたといわれます。
 
 その複雑な感情の矛先が外国人に向くということです。
 
 私の留学時代の実感では、学歴や職業や社会的地位や収入などの低い白人ほど、有色人種への差別がある気がします。学歴や職業や社会的地位や収入の高い人は、内心はどう思っているかはわかりませんが、少なくとも、外見上は人種差別主義的ではありません。
 
 世論調査によると、ブランデンブルク州のAfD支持者のうち、「生活状況が悪くなった」との答えは24%にすぎず、逆に「イスラム教の影響力が強すぎる」と受け止める人が9割に達しました。
 
 2015年の難民危機後も住民に占める外国人の比率は5%未満と、旧西独の各州の半分以下にもかかわらず、排他思想がまん延しています。
 
 ドイツの既成政党は、AfDと組みません。
 ただ、Afdは、ザクセン州とブランデンブルク州では4分の1の議席を得るなど力をつけてきています。
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