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2019年バックナンバー

雑記帳

歯科医師国家試験3人に1人が不合格

 平成31年3月18日、第112回「歯科医師国家試験」の結果が発表されました。
 
 医師国家試験の全体の合格率は89.0%と約9割くらいが合格します。約9割という割合は変わりません。
 
 歯科医師国家試験の合格率は63.7%。10人受けると3~4人落ちるという厳しさでした。
 
 なぜ、医師の国家試験に比べ、歯科医師の国家試験はこんなにも厳しいのでしょうか。
 理由は、歯医者さんが「多すぎる」とされているからです。
 
 平成28年12月31日現在における全国の届け出「歯科医師数」は10万4533人でした。
 
 そのうち約85%にあたる8万9166人が診療所(病床20未満の医療機関。病床20以上は「病院」)に勤務していて、また、5万9482人が「診療所の開設者又は法人の代表者」、すなわち歯科医院の院長や理事長を務めています(厚生労働省「平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査」)。
 
 歯科医師とよく比較されるのがコンビニの数で、同じ平成28年は5万7818軒となっています(日本フランチャイズチェーン協会「JFAフランチャイズチェーン統計調査」)。
 
 つまり、歯科医院はコンビニと同じくらいかそれ以上に多いわけです。
 
 かつて、日本が高度成長期を迎えた60~70年代は、砂糖入りのお菓子など食べ物が豊富に手に入るようになり、「虫歯の洪水」と呼ばれたほど、歯医者さんに患者が押し寄せました。
 
 今でも、「歯医者さんはお金持ち」というイメージを持っている人がいるかもしれません。
 
 しかし、口腔衛生の意識が向上し、歯に悪い食べ物も減ったおかげか、虫歯で歯が真っ黒という子どもはめっきり見なくなりました。
 
 一方で、歯医者さんの数がどんどん増えてしまったため、歯科医院1軒あたりの患者数が減り、「ワーキング・プア」もいるとささやかれるほど、歯科医院の経営が厳しくなっています。
 
 歯科医師国家試験の合格率も平成15年までは医師国家試験と同様に、ほぼ8~9割で推移していました。
 
 しかし、このままでは、ますます歯科医師数が過剰になると推計されたことから、平成16年に文部科学大臣と厚生労働大臣が「歯科医師の養成数の削減等に関する確認書」を取交わし、歯学部の定員削減を各大学に要請するとともに、「歯科医師国家試験の合格基準を引き上げる」、つまり合格率を低くすることにしました。
 
 私立大学の歯学部は低迷しています。
 
 なぜ、私立大学の歯学部が、目も当てられない状況に陥っているのか。それは、高い入学金や授業料を払って私立に入ったとしても国試に合格できるとは限らないうえに、歯科医師になれたとしても安泰とは言えないことを、受験生も保護者もよく知っているからです。
 
 かつて歯学部には、親の歯科医院を継ぐ予定の子弟や、医師になりたかったけれど医学部に通らなかったという学生がたくさんいましたが、今では、歯科医院を継ぐことを求めない保護者や、医学部は狙うが歯学部には行かないという受験生が増えたため、歯学部の人気が落ちました。
 
 こうした現状は、喜ばしいことではありません。
 
 現在の国試合格率から推測するに、途中ドロップアウトする学生もいるでしょうから、歯学部に入っても5~6割しか歯科医師になれないということになります。
 
 歯科医師になることができなかった歯学部出身者たちは、その後、どんな人生を送るのでしょうか。
 
 歯科技工士や歯科衛生士になる人もいると思われますが本意ではありません。

 弁護士業界も、同じような傾向にあります。
 
 ただ、弁護士の場合、歯科医師の開業場所を借りるために必要な費用(敷金礼金や保証金、家賃、業者への仲介手数料)が500万円くらい、医院の内装や外装にかかる費用が1500万円くらい、医療機器にかかる費用が1200万円くらい、開業時の材料費、事務機器等の費用 約300万円くらいの合計3500万円といわれています)と違って、初期投資の額は、ほんのわずかです。
 経営がうまくいかなくても、自己破産の危険はありません。
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