離婚
婚姻費用算定表とその例外
婚姻費用は、配偶者双方が合意すれば、それが婚姻費用となります。
争いがあれば、判例タイムズ1111号の算定表によって計算されることになります。
なお、最高裁判所ホームページに「養育費・婚姻費用算定表」が掲載されています。
判例タイムズ1111号には、算定表のもとなる計算式が記載されています。
判例タイムズ1111号は手に入りにくいので、「養育費・婚姻費用の算定方式と算定表」 という本をお買い求め下さい。購入は、大阪弁護士協同組合(06)6364-8208にお問い合わせ下さい。
算定表は、収入のみにより算定されます。資産、負債などは考慮されません。
「権利者」は、子を育てる側の収入で、「義務者」は、子を育てない側の収入です。
また「給与所得者」「自営業者」に分かれています。
会社員・パート・アルバイトなどは「給与所得者」の欄を見ます。源泉徴収表の「支払金額」の数字です。
自営業者の場合は、「自営業者」の欄を見ます。確定申告書控えの「事業収入」から「必要経費」を引いた欄の数字です。
ちなみに、自営業者は、脱税をしているのが当たり前というわけではありません。
家庭裁判所では婚姻費用分担請求事件において、医療法人の報酬、経営者の報酬収入について、提出された給与明細書の金額に従って形式的に判断するだけでなく、相手方からの主張立証の程度によっては、給与明細書の金額に加えて、会社の収入の一部を経営者の収入とみなす柔軟な判断をしているようです
医療法人の理事長、同族会社経営者は、本来なら自腹を切るところ、医療法人や会社の経費で飲食いし、医療法人や会社が自動車を購入して、ガソリン代やETCは会社持ちというところが多いですから。
私は、医療法人の報酬、経営者の報酬収入について、自営業者の算定表を適用すべきだと思っていますが(もうかっている自営業者は、本来なら自腹を切るところ、医療法人や会社の経費で飲食いし、医療法人や会社が自動車を購入して、ガソリン代やETCは会社持ちというところが多いですから)、一般的ではないように思います。
算定表には、2万円程度の幅があります。一律に決めてしまうと、その金額で決まりということで、話合いにならないからです。
なお、算定表の裏には、ちゃんとした算式があります。
審判になるとわかります。数字をいれると、何千何百何十何円まで計算できますが、通常は万円単位、千円単位で審判されます。毎月、何万何千何百何十何円の支払いをするというのは無理でしょう。
判例タイムズ1111号に算式が書いてあります。
収入に応じた基礎収入の割合が記載されていませんが、家庭裁判所時報に記載されています。
何巻何号何頁までは記載しません。弁護士に相談してください。
ある程度やり慣れた弁護士なら知っています。
判例タイムズ1111号の算定表は、ある意味「絶対」なものと考えていただいて結構です。
調停委員は、判例タイムズ1111号の算定表に基づいた調停案を示しますし、調停が不調になれば、家事審判官は、判例タイムズ1111号の算定表に基づいた審判をします。
例外の主たるものは、以下の2つです。他の例外もありますが、この2つが突出しています。
1 住宅ローン
例えば、夫が住宅ローンの残っているマンションを出て行って一人暮らしをし、妻と子がマンションに住んでいる場合、妻の年収にみあった平均住居費が、算定表の金額からマイナスされます。
妻の年収にみあった平均住居費は判例タイムズ1111号に記載されています。古い統計ですが、今もつかわれています。
2 私学学費
子が公立小学校、中学校、高等学校に通っているという前提で算定表がつくられています。
両親とも、私立小学校、中学校、高等学校に通わせるということについて合意の上なら、入学金や学費などの上乗せがあります。
上乗せは、夫婦が均等に負担するという裁判所と、収入(算定表の「基礎収入」)に応じて負担するという裁判所があります。同じ裁判官でも、事例に応じて、使い分けているという人がいます。
その他の例外は弁護士におうかがいください。