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トリビア バックナンバー 2/2

横書きと読点

裁判所の判決など裁判書があります。

 現在、A4横とじの文章になっています。平成13年1月1日から、そうなりました。それ以前は、B4縦書袋とじでした。

 ということは、弁護士の提出する訴状、答弁書、準備書面は、当然A4横とじの文章になっています

 ただ、弁護士の提出する訴状、答弁書、準備書面の多くと、判決などの裁判書は、少し体裁が変わっています。

 私を含め大抵の弁護士は、横書きの時でも、句点は「。」読点は「、」を使います。
 普通、常識的に考えれば「、」と「。」の組合わせ(日本文)、「,」「.」の組合わせわせですよね(英文・独文など)。

 裁判所が、「,」と「。」の組合わせを用いるのは、昭和25年(1950)に出された「文部省刊行物表記の基準」(「国語の書き表し方」)の付録である「横書きの場合の書き方」には、次のように書かれているとされています(2項、4項略)。

「1 横書の場合は、左横書とする。
 3 くぎり符号の使い方は、縦書きの場合と同じである。ただし、横書きの場合は「、」を用いず、「,」を用いる。」

 あるいは、昭26年(1951年)に国語審議会から建議され、翌年、内閣から各官公庁に通知された『公用文作成の要領』には、「公文書は横書きとし、句読点は『,』『。』を用いる」とされ、そして昭和27年内閣閣甲第16号依命通知に、『公用文作成の要領』が掲載されているからであるからと言われています。

 裁判所の作成する判決など裁判書は「公文書」ですから、それに従っているという次第です。
 ただ、Wikipediaなどには「読点は句読点の一つで、日本語文書で文の途中の区切りに打たれるもの。横書きでは下寄りに、縦書きでは右寄りに打たれる。Web上での横書き文書では文の区切りにもっぱら「、」が用いられる」と記載されています。
 これが、日本文として自然だからでしょう。

平成13年ころには、既に、パソコン、ワープロが普及していました。弁護士が、前に書いた文書を使回しにする際、「、」と「,」が混在しては、「使回し」が「ばれて」しまいます。
 ただでさえ、「右代表者代表取締役」が「上記代表者代表取締役」に「ばけた」など気にしなければならない点があるのに、句読点まで、気を配らなければならないというのもかないません。


ちなみに、裁判所の判決書きで特徴的なのは、数字の表し方です。
 「百二十三万四千五百六十七」という数字があるとします。
 弁護士は、「1,234,567」と記載する人が圧倒的に多いです。
 裁判所は「123万4567」と記載します。主文を朗読する時に、位取りを気にする必要なく、そのまま読めばいいのですから。ちなみに、民事裁判で朗読されるのは、通常主文のみで、理由は省略されます。

 私は、裁判官の経験があり、読む時に便利だと考えて「123万4567」と記載しています。「1,234,567」ではなく、「123万4567」と弁護士の文章に書いてあれば、大抵、裁判官経験のある弁護士でしょう。

 なお、私が裁判官を退官したのは平成2年で、横書きの判決を書いたことがなかったので(家庭裁判所は、従前より横書きでした。一時期、家庭裁判所の家事事件を兼務担当し、家事審判官として、遺産分割審判書などを起案したことがありますが、その時は、気にもとめていませんでした。おそらく、民事判決と同様「、」を使っていたと思います)、あまり、横書きの句点を意識すると言うことはありませんでした。
 
あと、判決書きなどで、皆さんが違和感を覚えるのは「・・・(・・・。)」と、素直に「・・・(・・・)」とせず、カギ括弧の前に、律儀に読点を入れることでしょう。
 これは、慣例かどうかわかりませんが、私は、裁判官時代、カギ括弧の前に句点を入れていました。
 弁護士になってから、すぐやめてしまいました。
 かねてより、見苦しいと思っていましたから。

 ちなみに、私のコラムの中で、読点が「,」になっていれば、どこかのホームページのコピペの部分です。
 私のワープロソフト(一太郎です)は、読点を「、」に設定しています。

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