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司法 バックナンバー 3/3

選択科目の不公平

司法試験も、年とともに、試験方法が変わっています。

 司法試験というときには、通常は、一次試験は教養問題で、大学の2年を修了していれば当然免除になりましたから、司法試験=「二次試験」を指します。

 私が司法試験を受験した年(昭和52年)当時は「短答」「論文」「口述」各試験に別れていました。
 法律家としてやっていくためには、法律の基礎が頭に入っていて事務処理が速いこと、説得力のある文章を書けること、人を説得する話術があること、以上全てが必要です。

 短答試験は、憲法、民法、刑法の基本3科目、マークシート方式、270分で90問を答えなければなりませんでした。ゼロ回答ありの5者択一です。
 問題自体は難しくありませんが、8割以上正答でなければならないので、何よりも速度と正確性が求められます。
 事務処理能力のない人は、裁判官・検察官・弁護士どれを選んでも「厄介者」になるだけですから、ここで落とします。

 論文試験と口述試験は科目が同じでした。
 憲法・民法・商法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法のいずれかが必須で、法律選択科目として、 民事訴訟法・刑事訴訟法(必須科目として選択しなかった方)・行政法・破産法・労働法・国際公法・国際私法・刑事政策の8科目から1科目選択、教養選択科目として、政治学・経済原論・財政学・会計学・心理学・経済政策・社会政策から1科目を選択します。

 私は、訴訟法は刑事訴訟法を選択しました。
 あまり興味もありませんし、弁護士になってから全くといって使っていませんが、論文試験は6月ですから、大学3年生のときにすべて講義が終わっている必要があり、刑事訴訟法は大学3年で講義が終わっていますが、民事訴訟法は大学3年で講義がすべて終わっているわけではありませんから、ある意味、刑事訴訟法を選択する以外に、選択の余地はありません。

 法律選択科目は「行政法」、教養選択科目は「財政法」を選択しました。
 国家公務員上級職試験との「両面待ち」の受験生は、必ずといっていいほど選択します。国家公務員試験に「行政法」「財政学」が必修選択科目ですから。

 ということは、東京大学や京都大学法学部の、現役4年生で、司法試験と国家公務員上級職試験との「両面待ち」の受験生は「刑事訴訟法」「行政法」「財政学」を必ずといっていいほど選ぶことになります。

 顔見知りと「しゅっちゅう」会います。顔見知りでなくても、論文まではともかく、面接時には「また、あんたか」「そらお互いや」ということになります。
 一度、大学の「よもやま話」をしようとしたら「私は、京大で、東大と違います」と言われたことがあります。

 私は、東京に行っても「東京弁」はしゃべりませんでしたし、まわりにそういう人が多かったので、同じ、東京大学在学中の関西弁をしゃべる学生だとばかり思っていました。
 短答試験と論文試験は京都で受験できますが、口述試験は東京でしか受験できません。
 そんなことに、気づくはずもありません。

 ふと考えました。
 選択科目の採点方法はどうなっているのであろうかと。
 母集団のうち、成績がいい人たちが選択する選択科目も、それなりの人たちが選択する選択科目も「公平」なんだろうか。

 「刑事訴訟法」「行政法」「財政学」のセットは、東京大学や京都大学法学部の、現役4年生の定番です。

 かたや、手取り早く、絶対司法試験に合格したい人は、「刑事訴訟法」「刑事政策」「心理学」選択します。絶対楽に決まっています。
 同じことを皆考えるので、「レベルの高くない人」と競争すれば良く、そのうえ、競争の激しい選択科目と、配点は同一です。
 どうせ、平均点をとって、偏差値あたりを得点とするのでしょうから。

 何か不公平な気がします。
 合格したからいいですけどね。

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