2012年バックナンバー
弁護士の就活氷河期
平成23年12月14日に新司法試験に合格して司法修習を終えた弁護士志望者(司法修習64期)のうち、400人が弁護士登録をしなかった、あるいは、できなかったというコラムです。
平成24年12月21日、司法試験に合格して司法修習を終えた弁護士志望者(司法修習65期)2080人のうち、70人が検察官、98人が裁判官に採用される見込み、一括登録したのは1370人、弁護士志望者の28.3%(合格者全体で26%)にあたる542人が未登録となる計算になると日本弁護士連合会が発表しました。
裁判官や検察官経験者が、弁護士会に登録しようとすると、個別に、資格審査委員会の審査と常議員会の承認が必要です。私の場合は、1か月も待たされました。大阪弁護士会としては最短だそうですが、気分がいいものではありません。
しかし、司法修習生が司法修習を終えると、希望する弁護士会に無条件に登録できます。
「一括登録」といって、最終試験の前に登録したい弁護士会に申請しておけば、常議員会で、最終試験の合格を条件として、常議員会は登録を承認します。
最終試験に合格すれば、即、弁護士会に登録して弁護士となります。
12月に登録しても、仕事になりませんから、翌1月に登録を選択する人もいます。
その分が542人に入っているから、542人は大げさだという説もあります。
もっとも、大阪弁護士会の場合、1月登録希望で修習終了前に登録申請した人も「一括登録」者として算入する扱いになっているようです。
他の弁護士会の扱いが同じなら、542人は「正味」ということになります。
法律事務所に就職したり、独立して事務所を開いたりできず、入会金や会費を払えないために弁護士会への登録をあきらめた人が多いのではないかとみられます。
平成21年の未登録者は約100人、平成22年の未登録者は約200人、平成23年の未登録者は約400人でした。
等比等列でいきますと、平成24年は800人ということになりますが、さすがに、542人にとどまったということですね。
前記のとおり、およそ26%≒4人に1人という計算です。
素朴な疑問なのですが、65期は法科大学院を修了していて、司法修習は貸与制になっていますね。
登録しなかった人のうち、本当に弁護士にならない(なれない)人は、法科大学院の奨学金や、司法修習の貸与金の返済はどうするつもりなのでしょう。
他人事ながら、気になるところです。
ところで、日本弁護士連合会は、弁護士の「就職難」が深刻化しているとして、司法試験制度の見直しを求めています。
少子高齢化と同様に「悪化する一方」でしょう。
これから、弁護士は増える一方です。
登録抹消者数は、死亡、高齢などによる登録抹消者約300名に加え(昔は司法試験の合格者は500名でした)、弁護士になったものの経済的に難しくなった若い弁護士の登録抹消者数にすぎません。
また、雇用する側の弁護士が、経済的に疲弊していますから改善の目途は立ちません。
一括登録をしない人も、ある程度、登録をしていきますから、未登録者は減ってはいきます。
もっとも「一括登録」をしない弁護士は、薄給か無給で雇用されるか、あるいは、即時独立という危険を冒すことになります。
弁護士も「就活氷河期」が続きます。
いくら景気がよくなっても、好転はしません。
ちなみに、2、3年前は、私の事務所にも、修習生を雇用してくれないかと他の弁護士から話があったり、事務所訪問をしたいという修習生からの連絡がありましたが、今年は全くありませんでした。