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2012年バックナンバー

ドイツとユーロ圏の国々の救済

ユーロ危機は、解決の糸口さえ見あたりません。

 経済弱国(ギリシャやスペインなど)では、それまで金利が高かったのですが、通貨がユーロに変わると、住宅ローンや消費者ローンの金利が下がり、住宅ブームが起きました。

 また ギリシャに限れば、政府は、低金利のユーロ建て国債を発行して、インフラ投資、公務員給与の引き上げ、年金の拡充にあてました。
 国民の生活水準が上昇したが、財政赤字が拡大しました。

 リーマンショックによって、ユーロ圏の景気が下降した時、ローンを返せない企業や人が増えて、銀行の不良資産が増大しました。
 政府は銀行を救済するために、公的資金を投入したので、財政赤字は一段と増加しました。
 国債は発行額が急膨張し、次第に信用を失しないました。
 ギリシャではデフォルトをおこしました。

 国際通貨基金(IMF)によると、国債価格の急落による損失は、最大で20兆円に達するといわれています。それはユーロ圏で、銀行の連鎖倒産が誘発するに足りる大きさです。

 ドイツは、通貨統合の恩恵を受けています。
 為替リスクがありませんから、ドイツ企業はユーロ加盟国に工業製品を輸出して稼ぎ、最近では経済危機のためにユーロ安になったので、ユーロ圏外への輸出が増加し、ドイツ経済は好調です。
 フランスも、他のEU各国を助ける余裕はありません。

 確かに、ドイツの銀行は、ギリシャをはじめ、ユーロ圏各国の国債を多量に有しています。
 「情けは人のためならず」という点もあります。

 ドイツ公共放送(ZDF)が、平成24年5月25日公表した欧州債務危機についての世論調査結果によりますと、ギリシャがユーロ圏に残留することに賛成と回答した人は31%にとどまり、反対が60%に達しています。
 ちなみに、平成24年11月の同様の調査では、反対は49%でした。

 ユーロ圏各国が共同で発行する「ユーロ共通債」については79%が反対、賛成は14%でした。導入されれば、ドイツが資金を調達する際の金利が上がるのは確実です。

 ある意味、当たり前ですね。

 ドイツの財政状況は悪化し、国債などの政府債務は積重なっています。
 消費税も16%から19%にあげました。
 ドイツは、年金の開始支給年齢を67歳まで順次上げていくことが決まっています。
 ギリシャでは年金の支払い年齢を61歳から63歳に引き上げるかどうかというレベルです。
 ドイツ人ならずとも「ちょっと待て」というところでしょう。

 ドイツは、ユーロ圏の中で財政危機に陥った国々を救済する基金に最大の拠出をするだけでなく、負債に苦しむギリシャやスペイン、イタリアなどに対して、低金利で融資を続けています。
 しかし、ユーロ参加国の債務の共有化、つまり、ユーロ共同債の発行にドイツが反対しています。
 ドイツにとって何の得にもなりません。

 ドイツ連邦共和国(1949年成立)の首相は、CDUのアデナウアー、エアハルト、キージンガー、SPDのブラント、シュミット、CDUのコール、SPDのシュレーダー、CDUのメルケル、これですべてです。どこかの国と大違いですね。

 ドイツはコール首相の時代まで、欧州統合に必要な資金を供出してきました。
 第2次大戦中に、約600万人のユダヤ人を虐殺した負い目から、「統一をさせてくれるなら、金は出しても、口は出さない」という姿勢を貫いていました。

 コール首相(1984年から1998年)の在任中の1990年、独は悲願の統一を果たしました。

 シュレーダー首相から、対外協調姿勢に変化が見られるようになりました。
 国連安全保障理事会の常任理事国の地位を求めるなど、「戦勝国と敗戦国、加害者と被害者の垣根はもはや不要」と言うことですね。

 メルケル首相は、まだ、まだ「寛容」です。
 メルケル首相の属するCDUと連立を組んでいるCSUとFDPの高官は「ギリシャ出ていけ」と「はっきり」ものを言います。
 メルケル首相も、ドイツの国益をはっきり主張します。
 本心はわかりませんが、選挙に勝たなければなりませんから、ドイツ国民の世論を気にせざるを得ません。


 本来、第二次世界大戦時代の「古証文」を持出すギリシャなどは「あほか」という気がしますが、いかがでしょうか。

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