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2012年バックナンバー

特例公債法

平成24年8月31日、安住淳財務大臣は、赤字国債発行に必要な「特例公債法案」が今国会で成立しない場合、9月以降、自治体への地方交付税(約4.1兆円)の支払延期や国立大学への補助金の減額など、予算執行を抑制する方針を正式表明しました。

 「いったい何のことだ」という人もおられるでしょう。

 赤字国債は、本来発行できないという定めが財政法にあります。
 公共事業等に要する国債は「建設国債」と呼ばれますが、それ以外は「赤字国債」です。
 家計に例えれば、住宅ローンやマイカーローンは「建設国債」に、生活費の穴埋めのための借金は、「赤字国債」に、それぞれ該当します。住宅ローンは「やむを得ない借金」、生活費の穴埋の借金は「悪い借金」です。


 原則、赤字国債は発行できないのですが、「特別法は一般法に優先する」という法理があり、特例公債法は特別法、財政法は一般法に該当しますから、「特例公債法」が成立すれば、赤字国債を発行することができます。

 国の赤字は800兆円を超えています。
 一般会計の予算が90兆円くらいですから、さぞかし、ずっと前から赤字国債を発行していたと思われるかも知れませんが、平成5年時点では0、平成6年から平成23年まで、毎年、赤字国債を発行するために「特例公債法」が制定され続けています。

 「特例公債法」の成立が問題にならなかったのは、衆議院と参議院に「ねじれ」がなかったからです。

 予算は、衆議院と参議院の決議が異なっていれば、衆議院の決議が優先して、予算が成立します。
 これに対し、「特例公債法」は法律ですから、衆議院と参議院双方の議決があるか、参議院が否決したものの、衆議院が3分の2以上の賛成で可決しなければ、法律として言い律しません。
 与党(連立も含む)が、衆議院だけでなく、参議院も過半数の議席を有していれば、何の問題もないわけです。

 衆議院と参議院に「ねじれ」るようになって、予算は衆議院の議決で成立するものの、それを裏付ける「特例公債法」が成立しなくなれば、支出は決まっていても、赤字国債分の収入がなくなるということになります。

 平成23年8月26日、官前首相が辞任表明したのは、特例公債法を、人質に取られていたからです。

 24年度予算の財源のうち税収と税外収入で確保できるのは約46兆円。一方、累計支出額は10月末で約45兆円に達する見込みとなっていますから、国債を発行できないまま、これまでのペースで執行を続ければ10月末に税収・税外収入分をほぼ使い切ってしまうことになります。

 ということで、公務員への給与、防衛や警察、外交などに関係する支出、国民生活に影響が大きい生活保護費や医療費などは止めずに、自治体への地方交付税の支払延期、国立大学への補助金の出張費、政府の行政経費の支出も50%以下に抑え、民間向け補助金なども交付を抑制するということですね。

 そんな「ぎりぎり」で、衆議院解散があり、衆議院議員がいないというというときはどうするんだとお考えの方もあるかと思います。

 憲法54条2項3項に「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる」「前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後10日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ」となっていて、参議院の緊急集会で、法案を通せます。もっとも、次の国会での衆議院の同意が不可欠です。

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