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2012年バックナンバー

戦争責任と謝罪

敗戦国が、「謝罪」したことがあるでしょうか。

 日本は、日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦に勝利し、第2次世界大戦で敗北しています。
 日清戦争で、中国が謝罪したという話は聞いたことがありませんし、日露戦争でロシアが謝罪したという話は聞いたことがありませんし、第1次世界大戦でドイツやオーストリアが謝罪したという話も聞いたことがありません。

 日清戦争で、中国は台湾と遼東半島(これは三国干渉でなしということになりました)を割譲し、賠償金を支払いました。
 日露戦争でロシアは樺太の北緯50度線以南を割譲しました。
 ドイツは、日本に関しては、信託統治領権国の変更くらいですが、エルザス・ロートリンゲンを含め、多くの領土を割譲し、到底返済不能の賠償金を負担しました。
 領土割譲や賠償金が「謝罪」です。
 日本も、台湾、朝鮮半島の独立を認め、樺太の北緯50度線以南、北方領土を除く千島列島の放棄をしています。
 領土割譲が「謝罪」です。


 なお、ドイツは謝罪したではないかという人がいますが「?」です。

 1970年12月7日、ブラント連邦首相は、ポーランドのワルシャワのゲットーの前でひざまずきナチスの犯罪に対して深い謝罪の姿勢を示していますが、ユダヤ人のホロコーストについて謝罪の意を示したのであって、戦争について謝罪したわけではありません。
 かえって、ポーランドが戦後行った旧東部ドイツ領からのドイツ人追放について「いかなる理由があっても正当化されない」と述べています。

 ヴァイツゼッカー大統領の1985年・戦後40周年記念演説も、ユダヤ人ホロコーストについては謝罪しても戦争に関しては謝罪していません。

 元来、戦争には双方に「大義名分」があるので謝罪の概念はなく、敗戦国の賠償責任だけです。
 どのように道義的に悪であっても、敗戦国が謝罪するなどということはありえません。

 なお、ナチスドイツのユダヤ人のホロコーストは、「言い訳」をしようがありませんから、ドイツ人は、ナチスを、ドイツ人とは別の種類の人たちだったといわんばかりに全部ナチスのせいにして、現在のドイツ人とは無関係にしようとしたという「戦略」をとったという面も否定できないでしょうし、1990年の東西ドイツの悲願を達成するための「戦略」をとったという面も否定できないでしょう。東西ドイツの達成後、ドイツ外交は強気になっています。

 国際社会は、センチメンタリズムや善意に満ちあふれているわけではありません。


 ちなみに、財政危機に陥ったギリシャのパンガロス副首相(当時)が、金融支援を渋る(客観的には「気前がいい」くらい支援しています)ドイツに対し、第2次大戦中のナチスによる損害の賠償をドイツに求めると発言して、「賠償問題は1960年に賠償金支払いで決着済み」とするドイツの反発を呼んだということもありました。
 ギリシャの右翼系新聞は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相にナチスの制服を着せた合成写真を掲載までしていましたね。

「貧すれば鈍する」ということですが、ギリシャも、副首相が個人的に「賠償」を求める発言をしただけで、「謝罪」は求めていません。

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