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よもやま話 バックナンバー2/2

既存不適格マンションの建替え

前の雑記帳に以下のとおり書いています。

「 昭和56年(1981年)に建築基準法施行令大改正され、新耐震設計基準が導入されました。昔の水準(関東大震災が念頭におかれていたそうです)では考えられていなかったことにより、耐震性が結果として劣ってしまったという理由で、改正がなされました。
 新耐震設計基準は、震度5程度なら被害はなく、震度6程度なら被害が出ても倒壊したりして人命が損なわれることのないとの基準で定められたそうです。」
「 なお、昭和56年の基準を満たさなくなったものを違法建築と「区別」し、「既存不適格建物」と呼び、「既存不適格建物」は耐震診断をし、必要に応じて耐震補強をするように「努力するよう」に法律で定められています。努力目標ですから、強制力はありません。」
「 自分や家族の命がかかっていますから、よほどの事情がない限り、昭和56年以前に建築された建物は購入しない方が賢明ですし、昭和56年以前に建築された建物は、耐震性の調査をして、必要とあれば補修をするのが賢明でしょう」


 なお、新聞報道によりますと、「現在の耐震基準に適応していないマンションを対象として」「国土交通省は築30年以上の老朽化したマンションの建て替え促進に乗り出す」「築30年以上のマンションは、5年後には2万棟にも達する」そうです。ほぼすべてが「既存不適格」ということになります。


 もっとも、平成14年改正の「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)62条は「集会においては、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議をすることができる」となっていますから、建替えには、マンション所有者の8割以上の同意が必要となります。

 5分の4、すなわち8割は簡単でしょうか?
 マンションの新築時の購入者は、自宅にするために購入しているのが普通であり、購入価格などの点から見て、経済力も年齢構成も「似たり寄ったり」ということが多いものです。
 しかし、30年も経つと、マンション所有者の経済力に圧倒的な差異が生じ、遊休建物として賃貸に出す所有者もいれば、経済的に「建替え」の負担ができない者も出てきます。

 30歳で入居したとしても60歳、ローンは65歳まで、年金があてにできないとなると、「老後の生活費」のための「虎の子の貯金」を「マンション建替え」などで「浪費」したくないと考える所有者が多いでしょう。

 基本的に、マンションの建替え問題は、一戸建てとは異なる、マンションの「宿命」といえます。
 一戸建てなら、資力と相談して建替えや補強をすればよく、資力がないため建替えや補強ができないとしても、地震の際の被害は自分だけ、誰にも迷惑はかけません。

 私個人は、マンション購入は好ましくないという考えです。
 購入資金の都合があれば、勤務先から遠くても、また、面積が小さくてもいいから、一戸建てにするのが「賢明」と考えています。
 足腰が自由にならないほど歳をとれば、一戸建てを売却して、都心のマンションを購入するのが便利でしょうね。

 国土交通省は「この『8割以上の合意』が建て替えの最大のネック」とみて、「区分所有法」の見直しも検討するといいますが、法律改正で、建替えへのハードルを低くしても、そう簡単に「建替え」とはならないと私は見ています。

 築30年の老朽化マンションの住民の資力は、その後の日本経済の停滞、また、少子高齢化による年金不安から、「いつ起きるかわからない」あるいは「自分が生きているうちに生じるかどうかもわからない」「大地震」に備えて「建替え」をするために「大金をはたく」とは思えないからです。
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