本文へ移動

よもやま話 バックナンバー2/2

逃切り世代?

司法修習32期(昭和53年終了開始・昭和55年修習終了)の同期の弁護士の小さな会合がありました。
 昭和55年4月修習終了ですから、弁護士経験27年半ということになります。
 平均すると、年齢は57歳、58歳くらいでしょうか。

 その中の一人が「32期くらいが最後の『逃切り世代』になるかもしれへんな」と言ってました。

 弁護士大増員時代の影響は、既にあらわれています。
 私が弁護士登録した平成2年には、大阪弁護士会の会員数は約2000人でした。今は、約3000人を越えています。
 もちろん、それだけ、弁護士間の競争が激しくなっているということでしょう。

 もっとも、弁護士経験27年半ですから、皆さん、それなりに今まで稼いでいます。
 また、年齢は57歳、58歳ですから、極端に先が長いわけでもありません。

 経済学者の森永卓郎氏は、人生の三大不良債権として、「専業主婦」「子供」「マイホーム」をあげ、このため日本人男性は、いつまでたっても豊かになれないと述べています。

 32期ともなれば、子供は全員大学を卒業・独立しているか、下の子が大学生くらい、人生の三大不良債権の1つである「子育て」は、ほぼ終了しています。

 マイホームのローンですが、弁護士には、何年かに一度「何かの間違いかのような大きい」事件収入が入るのが普通ですから、当初35年ローンを組んでいても、その都度「繰上げ返済」をしていて、ローンが残っている人が少数派です。つまり、人生の三大不良債権の1つである「マイホーム」もほぼ終了しています。

 あと残る「専業主婦」ですが、自分の老後を看てもらう人ですから、「不良債権」と呼んでは「ばち」があたります。また、年齢を考えると、今から、どこかに勤めに出てもらうといっても、雇い先がないでしょう。
 弁護士の妻が、肉体労働という話は聞きません。

 弁護士経験27年半ともなれば、それなりに顧客層を持っていて、いままでのような「殿様商売」は不可能としても、自分が引退するころまでの「事務所経営」のおおよその目途くついています。
 担保がなくなったマイホームの他に、それなりの金融資産も持っている人も多いです。

 ということで、冒頭の「32期くらいが最後の『逃切り世代』になるかもしれへんな」発言に続くのです。

 もちろん、自分の事務所を、自分の代で終了させるつもりの人の話で、子供に跡を継がせる、あるいは、大事務所化をめざすという弁護士さんは、「逃切り」とは言いません。
 なるほど、弁護士の「大増員時代」「大競争時代」を考えていては、「安閑」とはしていられませんが、弁護士となった息子や事務所の若手が考えていくことでしょう。

ちなみに、私は、10年裁判官をしていて、その期間の「地盤固め」ができていません。
 もっとも、私が、弁護士になったころは、ある意味「殿様商売」ができていました。
 最初から弁護士をされていた方のように「逃切り」とまではいかないものの、あと少し頑張れば、後で振り返れば「逃切り」だったと思えるようになるかもしれません。


 憂慮されるのは、これからの若い弁護士さんは、「自分が、どうやって食べていくか」に関心があるようで、「自分は、どんな仕事をしたいか」に関心があるわけでもなさそうなことです。
 自分の事務所経営ばかりに全神経がいくのもどうかとは思います。
TOPへ戻る