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2013年バックナンバー

カイロ宣言とポツダム宣言

尖閣諸島について「カイロ宣言」や「ポツダム宣言」という言葉がよく見られます。

 カイロ宣言(The Cairo Conference)は、1943年11月22日、アメリカ大統領フランクリン・D・ルーズベルト、イギリス首相ウィンストン・チャーチル、中華民国国民政府主席の蒋介石によって、カイロ会談が行われ、12月1日に発表された声明のことです。

「 The several military missions have agreed upon future military operations against Japan.
The Three Great Allies expressed their resolve to bring unrelenting pressure against their brutal enemies by sea, land, and air.
This pressure is already mounting.
The Three Great Allies are fighting this war to restrain and punish the aggression of Japan.
They covet no gain for themselves and have no thought of territorial expansion.」
 に続き
「It is their purpose that Japan shall be stripped of all the islands in the Pacific which she has seized or occupied since the beginning of the First World War in 1914, and that all the territories Japan has stolen from the Chinese, such as Manchuria, Formosa, and the Pescadores, shall be restored to the Republic of China.」
 と記載されています。

 後段を邦訳すると「同盟国の目的は、1914年の第一次世界戦争の開始以後に日本が奪取し、または、占領した太平洋におけるすべての島を日本国から剥奪奪すること、並びに満洲、台湾及び澎湖島のような日本が中国人から盗取したすべての地域を中華民国に返還することにある」となります。

 中国の楊外相が、平成24年9月27日、国連総会で演説した際に、日本語訳で「日本が中国人から盗取した」、英訳で「Japan has stolen from the Chinese」と述べた部分(国連の公用語である中国語が原文)は、「カイロ宣言」を意識しています。

 もっとも、尖閣諸島が、「日本が中国人から盗取した」部分に該当するかどうかは別問題です。
 「満洲、台湾及び澎湖島」とありますが、澎湖島は台湾の西にある島です。

 下関条約に「清国は、遼東半島、台湾、澎湖諸島など付属諸島嶼の主権ならびに該地方にある城塁、兵器製造所及び官有物を永遠に日本に割与する」とありますが(遼東半島は三国干渉により返還)、尖閣諸島は、下関条約により割譲された土地ではありません。


 ポツダム宣言は、アメリカ大統領ハリー・S・トルーマン、イギリスの首相ウィンストン・チャーチル、ソビエト連邦共産党書記長ヨシフ・スターリンが会談し、1945年7月26日にアメリカ大統領、イギリス首相、中華民国主席の名において発せられた宣言です。

「(1) We the President of the United States, the President of the National Government of the Republic of China, and the Prime Minister of Great Britain, representing the hundreds of millions of our countrymen, have conferred and agree that Japan shall be given an opportunity to end this war.」
「(8) The terms of the Cairo Declaration shall be carried out and Japanese sovereignty shall be limited to the islands of Honshu, Hokkaido, Kyushu, Shikoku and such minor islands as we determine.」
 と記載されています。

 (8)項を邦訳すると「カイロ宣言の条項は履行されるべきであり、日本の主権は本州、北海道、九州および四国ならびに我々の決定する諸小島に局限される」となります。

 日本はポツダム宣言を受諾して降伏しています。

 もっとも「we」(我々)の意見が違ったらどうなるかについては、触れられていません。

 中国の理屈は、「我々の国の決定する諸小島」は、「戦勝国」である中国が決めるというようです。

 アメリカは、尖閣諸島について、「信託統治制度の下」にあったと解釈していることになります。尖閣諸島の一部に米軍の射撃演習場がありました。
 また、沖縄の施政権返還の時、アメリカは尖閣諸島を日本に返還しました。
 アメリカが、尖閣諸島を、沖縄県の一部と解釈していなければ、このようなことはできません。

 現時点で「we」(我々)の意見が違っていることになります。

 中国が勝手に決められるという理屈には「無理」がありますね。
 アメリカは、尖閣諸島を、沖縄県の一部と解釈して行動していたわけで、中国は、施政権返還まで、何の文句も言っていません。
 常識的に考えれば、「we」(我々)の意見は、アメリカの見解である「尖閣諸島は沖縄県に属する」はずのものを、あとになって、中国が、台湾に属すると言い出したのではないでしょうか。

 なお、いずれにしても意味はありません。
 カイロ宣言に「They covet no gain for themselves and have no thought of territorial expansion.」(同盟国は、自国のためには利得も求めず、また領土拡張の念も有しない)とあります。
 尖閣諸島が、もともと日本領なら、中国が「取られた」ということはありませんし、もともと中国領なら「取った」ということで、「もともと、どちらの領土か」という問題に帰着します。
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