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司法 バックナンバー 2/3

国民総背番号制

国民総背番号制(納税者番号制度)の導入が平成26年度導入に向けて検討されています。

 納税者番号制度とは、納税者1人1人に番号をつけて管理し、各人の資産や所得、納税の状況を把握しやすく整える制度。所得を正確に把握できるため、脱税や課税漏れの防止などに効果があるとされています。
 また、利子や配当、株式譲渡益など金融商品から生じる所得が様々で納税を簡単にする目的の金融所得の一体課税を実現する上では不可欠とされています。

 米国では、個人の銀行、クレジットカード、ローンの取引状況をまとめておき、信用情報として提供するサービスがある。これらは、社会保険番号という背番号を使って、取引情報を集約しています。
 信用情報が簡単に把握できますね。

 ただ、納税者番号制度の導入については、「プライバシーを侵害する監視社会を作り出すものだ」として反対する声が大きいようです。
 また、日本では、情報漏洩が日常茶飯事のように起きていますから(銀行、保険会社などの顧客名簿の漏洩がいかに多いか考えてくださればわかります)、情報が集約されれば、担当一職員の「小遣い稼ぎ」で、情報が根こそぎ流出する可能性があります。

 日本では、現実に、法制化の試みがなされてきましたが、現実化していません。

 自営業者や農家などの所得を正確に把握することができるようになりますから、自営業者や農家が反対して実現していないという理由があげられていますが、自営業者や農家などが、どれだけ圧力団体として政治的に力を持っているのか疑問です。

 自営業者や農家など、どれだけ高所得を得ている人がいるのでしょうか。また、開業医などのうち「儲かっている人」は、医療法人をつくって節税をしているでしょうし、弁護士は、「儲かっている人」は、数からすれば少数でしょう。医師は圧力団体をつくっていますが、思想信条がバラバラな弁護士に圧力団体をつくれるはずもありません。

 むしろ、実現していないという理由は、「政治家自身」が、国民総背番号制に反対だからのような気もします。


 なお、「税と社会保障制度共通の番号制度の導入」など、年金制度などの改革を実現するには、納税者番号制度により、個人の所得などを政府が把握することが必要不可欠です。

 また、「負の所得税」(所得の少ない人は現在税金が0ですが、逆に、納めてもいない税金を還付し、生活の足しにしてもらうという制度)導入のためには、納税者番号制度が不可欠です。

 「子供手当」など、各種手当ての「所得制限」にも、納税者番号制度導入が不可欠です。
 納税者番号制度なしに、正確な「所得制限」などは、現実に不可能でしょうね。
 おおざっぱな「所得制限」をするにしても、事務手数は大きく、その費用も並大抵ではないでしょう。


 なお、制度の設計に加え、番号を処理するためのコンピューターシステムの構想をまとめる必要があります。ここで個人情報の漏洩を防ぐ仕掛けを検討しなければならなりません。
 しかし、「個人情報を絶対に漏らさない仕組み」は絶対に実現できません。
 神様・仏様がつくるのではなく、しょせん人間がつくり、人間が運用するのですから。

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