司法 バックナンバー 2/3
弁護士増員で被害を受けているのは若い弁護士さんだけではありません
もちろん、若手弁護士も、能力と経営の才能があれば、自力で、新規に自分の顧客層を開拓できますし、ベテランや中堅の顧客を自分の顧客とすることも可能です。
弁護士は、ベテラン、中堅、若手すべてが同一資格で、能力と経営の才能次第で、ベテラン、中堅をしのぐ収入を得ることはもちろん可能ですし、現実に、そのような弁護士も数多くいます。
今思えば、牧歌的な時代だったのでしょうか。
司法修習生合格者が500人程度の時代には、独立するとき、従前の「ボス弁」から、一部顧客を譲受け、あるいは、自分が担当してきた顧客で、「ボス弁」とあわない顧客が自分の顧客となっていました。
また、従前の「ボス弁」は、自分の事務所でするのは「非採算」でも、独立した手のころなら「採算」にあうであろう事件、また、気心が知れていますから、「利害相反」する依頼者の事件(両方の依頼を受けられない事件)を紹介するということはよくありました。
ぜいたくさえ言わなければ、事件は「いくら」でもあったといえるかも知れません。
ただ、これだけ弁護士数が増えてくると、ベテラン、中堅にも余裕がなくなってきています。
間違いなく弁護士数が増えているにのに対し、事件数(訴訟事件数は統計で出ています)は一向に増えていない(サラ金相手の過払い訴訟だけが増加しています)からです。
まだ救いなのは、ベテラン、中堅は、通常、それなりの顧客層を確保している人が比較的多いことです。
また、「実入りの良い事件」か「実入りの悪い事件」か、当初に依頼者から見せられた証拠関係などより見極めをつける力が、経験を経ることによってついている人が比較的多いです。
これも大きいのですが、金銭的余裕も、ベテラン、中堅に比較的有利で、金銭的余裕があれば、目先の「小金」のために、事件を受任して、時間や手間ばかりかかり、敗訴になり報酬がもらえず、あとで後悔することも少なくなります。
中堅はともかく、ある程度の顧客層をもったベテランなら、「先が長くない」という事情もあり、ある程度「流していけば」逃げ切れる(ハッピーリタイアーする)ことができます。
中堅は、「ある程度の先がある」という事情から、逃げ切れる(ハッピーリタイアーする)目途が立っている人は少数でしょう。中堅やベテランとの顧客・事件の取合いし、若手から顧問先や事件を取られないように防御しながら、新規顧客を開拓していかなければなりません。
今の若い弁護士さんは、2世、3世を除き「牧歌的なころの弁護士の収入や生活ぶり」を知りませんから、ある意味、幸せかもしれません。
中堅の弁護士にとって、かつての「古き良き時代」を知っているだけに、「落差」はこたえますね。
しかし、そうなることは客観的に知り得た、つまり「超ハイリスク」であることを知り得ながら弁護士を志望しているわけですから、リスクが顕在化しただけかも知れません。
客観的にみれば、2、3年前から、「無理に」司法修習修了者を採用している事務所が多いですから、その反動はきます。
採用しようとすれば、従前からの弁護士に「独立」してもらうしか方法はありませんが、それも無茶な話でしょう。