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司法 バックナンバー 1/3

日弁連法曹人口政策会議の「中間取りまとめ案」

日弁連の「法曹人口政策会議」において、これまでの議論をもとに、事務局で作られた「日弁連法曹人口政策会議の『中間取りまとめ案』」が出されました。

 ちなみに、日弁連の「法曹人口政策会議」は、法曹人口に関する日弁連の基本政策案の立案と、これについて世論の理解と支持を得るために必要な措置をとることを目的として設置されたものです。
 構成メンバーは、日弁連会長、日弁連副会長、日弁連理事、関東弁護士連合会・近畿弁護士連合会・中部弁護士連合会・中国弁護士連合会・九州弁護士連合会・東北弁護士連合会・北海道弁護士連合会・四国弁護士連合会から4人ずつ推薦された32人の委員、会長指名委員の合計140人で構成されています。

 「中間取りまとめ案」は、以下のとおりです。なお、pdfファイルからのコピーですから、添削はしましたが、文字化けしたり、文字がとんでいる可能性がありますので、ご了承下さい。。

「1 当連合会は、これまで「市民にとって、より身近で利用しやすく分かりやすく頼りがいのある司法」の実現に取り組んできた。しかしながら、現在の司法をめぐる状況は、司法過疎の解消や被疑者国選の実現、民事扶助制度の拡充等がなされてきたものの改革はいまだ途上にある。
 したがって、当連合会は、これまでの司法改革を検証し、是正すべき点は是正するとともに、法律扶助予算の抜本的拡充、裁判官・検察官の大幅増員、裁判所支部の充実、権利救済のための民事訴訟・行政訴訟制度の抜本的改革と実体法の整備等司法制度の改革に引き続き全力で取り組む。

2 ところで、司法試験合格者は、1947年から1962年までは200人から300人台、1963年から1990年までは400人から500人台で推移し、1993年以降約700人、1999年以降約1000人、2004年以降約1500人、2007年以降約2100~2200人(2008年以降は新旧両司法試験の合計数)と急増してきた。
 しかし、司法基盤の整備や社会の弁護士受入れ態勢は極めて不十分であり、司法試験合格者の急激な増加により、制度の「歪み(ひずみ)」ともいえる様々な問題が生じている。

3 第一に、急激な合格者増員の中で、法科大学院制度及び新修習制度が、「法曹の質」の維持という観点から見て、制度として十分に機能しきれていないのではないかという懸念である。
 設立数及び入学定員が過剰な状態にある現在の法科大学院においては、その教育内容や教員の資質、修了認定の厳格さなどに大きな格差があると言われており、司法修習生の基本的な知識不足・理解不足が指摘されている。
 もとより、一部にそのような司法修習生がいるからといって、法科大学院出身の司法修習生全体の質に問題があるかのようにいうことはできないが、現在の合格者数においてそのような「法曹の質」の懸念があるとすれば、その是正策が検討されるべきである。
 現在、法科大学院制度については、その数や総定員数、教育内容、適正配置等について見直しの議論が行なわれているが、それらも踏まえて、当面の合格者数も検討されるべきである。
 また、1年に短縮された司法修習制度について、「法曹の質」の観点から、養成期間に疑問や懸念の声も多々あり、二回試験不合格者が大量に出現する事態ともなっている。
 したがって、司法修習制度のあり方についても、あらためて検証が必要である。
第二に、もっとも深刻な問題は、新人弁護士のいわゆる「就職難問題」である。
 長引く経済不況もあって、新人弁護士をめぐる雇用環境は悪化している。
 2010年暮れに登録時期となる新63期の弁護士においては、相当多数の新人弁護士が法律事務所に就職できない事態が生じており、今後も続くことが懸念される。
 このような就職難状況が生じること自体、当初予測されていた弁護士への法的需要がいまだ社会に現れていない証であるという声もある。
 もとより、「就職難問題」は社会全体の傾向であり、弁護士だけが特別という訳ではない。
 しかし、弁護士が実務家として一般社会や市民の要請に的確に応えていく能力を身に付けるためには、先輩法曹の指導のもとで実務経験を積み、能力を高めていく、いわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)がどうしても必要である。それが就職難のために得られないとすれば、実務家として必要な経験・能力を十分に修待できていない弁護士が社会に大量に生み出されていくおそれがあり、ひいては、市民の権利保障や弁護士-の倍額にも少なからずマイナスの影響を及ぼしかねない。

4 当連合会は、以上のような現状認識及び問題意識から、政府及び関係諸機関に対し、当面の緊急対策として、司法試験合格者数を現状よりさらに相当数減員することを求めるものである。
 すなわち、様々な制度の「歪み(ひずみ)」の問題が発生している現状においては、2002年3月の閣議決定はもはやその前提を既に欠いているとも評価しうるのであり、司法基盤整備及び法的需要の状況を検証しつつ、「歪み(ひずみ)」を是正する方策として、法曹人口増員のさらなるペースダウンを提言するものである。
 なお、当連合会は、2009年3月に合格者数は当面現状程度にとの提言を行ったが、当時懸念されていた司法過疎・偏在問題や被疑者国選・裁判員制度への対応態勢問題については、現在の増員ペースによらなくても対応が可能な状況となっている。

5 以上のとおりであるので、当連合会は、
 ① 政府及び関係諸機関に対し、当面の緊急対策として、司法試験合格者数を、現状よりさらに相当数減員することを求める。
 ② 適正な司法試験合格者数及び将来法曹人口数について、市民や関係者の意見も聞きながら、今後も検討を進め、社会に理解され支持される政策作りを行ない、「市民にとって、より身近で利用しやすく分かりやすく頼りがいのある司法」を実現するための運動を進めていく。」


 私の本ホームページ開設時(平成19年6月1日)の「雑記帳」の1つめのコラムは、「弁護士大増員時代」でした。
 3000人にはなりませんでした。
 ただ、2000人でも、「歪み(ひずみ)を是正する方策として、法曹人口増員のさらなるペースダウンを提言するものである」というのが現状でしょう。

 ただ、マスコミ等から「バッシング」を受けるのは確実です。

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